韓国は本当に「法治国家」なのか?
産経新聞前ソウル支局長が体験した"驚きの裁判"

週刊現代 プロフィール

感情が法律を超えてしまう国

加藤さんの裁判は、日本でも公判のたびに大きく報道され、多くの日本人が注目していました。こうした反応をどう感じていましたか。

全面的に支えてくれた家族には感謝したいです。長女は大学受験の真っ最中で、長男は短期留学に出たりしていたのですが、家族で励まし合いました。

それから、会社の人たちがソウルまで対策を相談しに来たので、私が安易に謝罪したりせず戦う意思を伝えると、全面的なバックアップを約束してくれました。実は私は、赴任先で刑事事件として罰せられるような行為を犯したのだったら、会社を辞めなくてはと覚悟していたのです。

裁判では、西日本新聞のソウル支局長をはじめ、アメリカ人ジャーナリストも証言台に立ち、「表現の自由は民主国家の根幹だ」と熱っぽく語ってくれました。日本政府も事あるたびに韓国政府に対して、早急に善処するようプッシュしてくれました。

こうした多方面からの応援の結果、朴弁護士すら予期していなかった無罪判決を勝ち取ることができたのだと思います。皆様に感謝しています。

他のソウル特派員とはまったく異なる経験をされたわけですが、いま振り返って、韓国という国をどう思いますか?

韓国は法治国家の国というより、情治国家の国だと、つくづく思いますね。感情が法律を超えてしまうわけです。

私の裁判と同時期に、大韓航空のいわゆる「ナッツ姫事件」が起こりました。大韓航空の創業者の孫娘である副社長が、ニューヨークの空港で離陸直前の乗員の態度に噛みついて離陸時間を遅らせた事件です。

結局、女性副社長は一審で実刑判決を受けましたが、この裁判もまさに、法律より国民感情が主導した裁判でした。

現在は本社に戻り、何の担当をしているのですか。

私が朝鮮半島と関わったそもそものきっかけは、警視庁で外事事件や拉致を担当したことでした。拉致問題は、1980年に産経新聞がスクープして始まったこともあり、わが社は伝統的に力を入れています。いままた古巣の社会部に戻って、主に警察庁と拉致問題の取材をしています。

新聞記者として、ソウルでまたとない体験をしたので、これからの取材活動に活かしていきたいと思っています。

将来、再度のソウル赴任を命じられたら、どうしますか?

社命が下れば、もちろん再度のソウル勤務も厭わないつもりです。記者として、読みごたえのある日韓関係の取材をし、書いていきたいという希望があるからです。

ただ、今後韓国が、私を受け入れてくれるかどうかは分かりませんが。

(取材・文/近藤大介)

かとう・たつや/'66年東京都生まれ。'91年産経新聞社入社。'99年から社会部で警視庁、拉致問題などを担当。'04年、延世大学で語学研修。社会部、外信部を経て'10年11月からソウル特派員、翌年11月ソウル支局長。'14年10月から社会部編集委員