「サンダース旋風」で深刻化する民主党内の亀裂
〜「政党」の結束が揺らいでいる

アメリカ大統領選・現地リポート
渡辺 将人 プロフィール

クリントン夫妻の「神話」への挑戦

たしかにニューハンプシャー州はサンダース氏の地盤バーモント州に近く、サンダースに有利だった。だが、ヒラリーにとってもニューハンプシャー州は思い入れのある州だった。

1992年の大統領選挙で、夫のビル・クリントンはアイオワでは3位と不振も、ニューハンプシャーでほぼ同着1位に近い2位に滑り込み、指名獲得の勢いを得た。米メディアはこの見事な「復活」からクリントンに「The Comeback Kid」(カムバック・キッド)というニックネームを付けた。

また、2008年大統領選でヒラリーが初戦アイオワでやはり3位の辛酸を舐めた後、オバマを押さえ込んで堂々1位で勝利したのもニューハンプシャーだった。

「アイオワで負けてニューハンプシャーでカムバックする」のは、クリントン家のジンクスであり、ニューハンプシャーはこれまで、クリントン家にとって縁起のいい土地だった。だからこそ、サンダース陣営は「カムバック」神話に挑戦して、神話を書き換えることの予備選全体への心理的効果にこだわった。

実質的にはニューハンプシャーを落としただけで、ヒラリー陣営にとって、今後のレースに致命的な悪影響を及ぼすことはない。ネバダ州、サウスカロライナ州など、ヒスパニック系、アフリカ系などヒラリー支持が勝る票の支配的な州が続く。ただ、ニューハンプシャー州での勝利はサンダース旋風の本物度を世に示す結果となった。

そのサンダース旋風をどう理解したらいいか。

「鍵」を3つに絞れば、1つ目はニューハンプシャーと隣接するマサチューセッツ州選出のエリザベス・ウォーレン上院議員、2つ目はトランプ旋風との相互作用、3つ目は「ウォール街を占拠せよ」運動だ。次回以降に検討したい。

渡辺将人(わたなべ まさひと)
1975年東京生まれ。北海道大学大学院准教授。シカゴ大学大学院国際関係論修士課程修了。早稲田大学大学院政治学研究科にて博士(政治学)取得。ジャニ ス・シャコウスキー米下院議員事務所、ヒラリー・クリントン上院選本部を経て、テレビ東京入社。「ワールドビジネスサテライト」、政治部記者として総理官 邸・外務省担当、野党キャップ。コロンビア大学、ジョージワシントン大学客員研究員を経て現職。『見えないアメリカ』(講談社現代新書)、『現代アメリカ選挙の変貌』(名古屋大学出版会)、『アメリカ西漸史』(東洋書林)など著書訳書多数。