「格差」に蝕まれてアメリカ社会は壊れかけている
〜米大統領選"異変"の読み方

今そこにある民主主義の危機
笠原 敏彦 プロフィール

誰がトランプを支持しているか

次は、トランプ氏の支持層である。

この右翼ポピュリズム的ムーブメントを支えているのは、白人労働者層の「古き良きアメリカ」へのノスタルジアだろう。経済のグローバル化、デジタル情報革命などがもたらす恩恵から取り残され、逆に雇用、賃金面などで国際競争のしわ寄せを受ける労働者層だ。

彼らが不遇の原因として、移民や外国人をスケープゴートにするのは欧米先進各国に共通する構図となっている。

米キニピアック大の昨年12月の世論調査では、トランプ氏が大統領になったら「恥ずかしい」と思う人が5割もいる。それにもかかわらず、トランプ氏が候補指名レースで快走していることは、アメリカ社会に走るフォルトライン(断層線)の深さを示すものだろう。

格差拡大は、英語圏、特にイギリスとアメリカで1980年前後から始まったとされる。サッチャー、レーガンの登場のタイミングであり、市場主義経済の普及とともに経済のグローバル化が進み、ITなどの技術革新が本格化した時代である。

OECD(経済協力開発機構)が2014年12月に公表した報告書によると、所得分配の不平等さを示すジニ係数(1に近いほど格差が大きい)は、アメリカ(0.4)とイギリス(0.35)が先進国中では1、2位を占める。

アメリカは、イギリスの階級社会を反面教師に、自由と平等を理想に建国された。そのアメリカが、新自由主義の下で「勝ち組」と「負け組」のコントラストが鮮明になり、半ば“階級社会”化してしまったのである。

アウトローへの期待の高まり

アメリカ大統領選に費やされる資金は100億ドルと言われる。その多くは、企業や団体が無制限に献金できる「スーパーPAC(Political Action Committee、政治行動委員会)」という政治活動を行うアメリカ独自の組織に流れ込む。

このスーパーPACの活動で目に付くのが、テレビCMなどでライバル候補を誹謗中傷するネガティブ・キャンペーンだ。大富豪や大企業が、意中の候補を支持するスーパーPACに巨額献金を行うことで、将来の政治的影響力を確保するパイプとなっているのである。

有権者がこうしたシステムの在り方に憤りを覚えることは何ら不思議なことではないだろう。

こうした中で、300万人を超える人々から個人献金を集めて戦うサンダース氏と、「私には資産がある。お金で買収されることはない」とアピールするトランプ氏は、スーパーPACとの関わりが薄く、「大富豪・大企業―ワシントン政界」のリンク、ロビイストの影響を断ち切れる存在として期待が強いのである。

両者の支持層は、ワシントンの自己改革能力を見限り、アウトローでなければシステムの大掃除はできないと考えているのである