「格差」に蝕まれてアメリカ社会は壊れかけている
〜米大統領選"異変"の読み方

今そこにある民主主義の危機
笠原 敏彦 プロフィール

左傾化する若者たち

サンダース氏とトランプ氏が勢いを見せる選挙戦の展開は、「ワシントン=既成政治」への反乱と説明されることが多い。

公立大学の授業料無料化など欧州社民主義的な政策を掲げるサンダース氏を支持する草の根の若者層。反移民などポピュリスト的な訴えを行うトランプ氏を支持する白人労働者層。

両支持層の思考のベクトルの向きは全く異なるものの、ワシントン政界、ウォール街的な「エリート文化」への憎悪感を爆発させている点においては共通する。

ここで、両支持層の動向を分析することで、アメリカという社会システムの機能不全について考えてみたい。

まずは、サンダース支持層である。自由を国家のコアバリューとするアメリカでは「社会主義」はダーティ・ワード(忌むべき言葉)だった。そのアメリカで盛り上がりを見せるサンダース現象は、この国の若者層の左傾化を示すものだろう。

2008年のリーマン・ショック後に起こった「ウォール街を占拠せよ」運動につながるもので、中核となるのは「ミレニアル世代」(1980~2000年生まれ)である。

サンダースを支持する若者たち〔photo〕gettyimages

「子どもの世代は親の世代より豊かになれる」

第2次大戦後の経済成長は、こんな“庶民的アメリカンドリーム”を生んだが、経済格差が拡大し、中間層が縮小する中で、ミレニアル世代にそんな楽観主義はなさそうだ。

また、「丸太小屋からホワイトハウスへ」の言葉に象徴され、アメリカ社会が誇りとしてきた社会的流動性の高さも近年、陰りを見せている。

こうした閉塞状況に身を置く若者層が諸悪の根源と見なすのは、巨大金融資本、すなわち「カネが持つ政治的影響力」である。だから、サンダース氏が「腐敗した選挙資金制度の下、ウォール街と大金持ちが彼らの選ぶ候補に巨額の資金をつぎ込んでいる」と訴えるとき、彼らは喝采を惜しまないのである。