豊かな「個性」としての発達障害〜多かれ少なかれ誰もがもっている

『発達障害の素顔』
山口 真美 プロフィール

他者について理解を深めようとするとき、顔を見る行為はもっとも大切なこととなる。顔を見ることは、自閉症の人たちの苦手なことのひとつとされているが、実際に健常者と比べると、そもそも全体のバラツキが大きいことがわかってきた。

「顔を見る」という行動は、世界を見る能力の中でも特に発達した、複雑な能力である。複雑な発達を経るがために、その能力のバラツキが大きく、また複数の下位能力に分かれて独特な認知を形成するのである。

卒業してから20年以上たった後、同級生を雑踏の中から見つけ出すことができる人もいれば、毎日オフィスで顔をつき合わせている同僚と街中ですれちがっても、その顔がわからずに気づかない人もいる。そんなバラツキが、なぜ生じるのか。

本書では、これまで社会性の障害といわれてきた発達障害の原因を、近年の脳科学と認知科学からわかった成果を基に説明していく。

発達障害の問題は、発達の出発点における、ほんのわずかな認知のちがいにある。認知の基本であるモノの見え方や聞こえ方が平均的な人たちとちがうだけで、コミュニケーションのすれちがいが生じ、社会性がないというレッテルを貼られることになる。

現代社会の中では、発達障害は特殊な問題ではない。中でも自閉症においては、同じ傾向をもつ人々はすそ野を広げ、社会の中でひとつの個性となりつつある。学校や会社で、少々変わった人はいないだろうか。じつは私たちのごくごく身近に、こうした素因をもつ人々は存在するのである。

小児医療の進展に伴い、発達障害と診断されるケースは増加傾向にある。こうした状況の中で人々は、さまざまな個性を受け入れていかねばならない。そのためにも、発達障害の認知の特殊性を理解する必要があるのだ。

最後にひとつ。赤ちゃん実験の立場からすると、発達障害に見られる個性的な認知とその脳の発達は、「脳の発達と進化」から鑑みて、より進化した形態である可能性も考えられる。そんな世界をのぞいていこう。

著者 山口真美(やまぐち・まさみ) 
一九八七年、中央大学文学部卒業、お茶の水女子大学大学院人間発達学専攻単位取得退学。博士(人文科学)。ATR人間情報通信研究所客員研究員、福島大学生涯学習教育研究センター助教授、中央大学文学部心理学研究室助教授を経て、現在、同大学教授。著書に、『美人は得をするか 「顔」学入門』(集英社新書)『顔を忘れるフツーの人、瞬時に覚える一流の人』(中公新書ラクレ)『「個性」はどこから来たのか』(講談社)『赤ちゃんは世界をどう見ているのか』(平凡社新書)など多数。
『発達障害の素顔』
脳の発達と視覚形成からのアプローチ

山口真美=著

発行年月日: 2016/02/20
ページ数: 176
シリーズ通巻番号: B1954

定価:本体  800円(税別)
 

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(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)

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