豊かな「個性」としての発達障害〜多かれ少なかれ誰もがもっている

『発達障害の素顔』
山口 真美 プロフィール

「私と子どもは、一心同体」というのは、勝手な思い込みでもある。客観的なちがいを知り、そのちがいを楽しむ余裕をもつことが大切だ。特に個性のある子をもつ親にとっては、必須の考えである。

本書(『発達障害の素顔』)で扱う、視覚情報処理とその発達という科学的知見に基づいた理解は、大きな支えとなろう。

たとえばこれまでのやり方では、何かを教えようとするときに、大多数の平均的なやり方を無理強いしているところがあった。科学的知見は客観的であるので、どの立場にも平等で、多数派に加担することはない。親であれ教師であれ、これまでのやり方や平均的な立場を強要せず、相手の立場に即して対応することができるからだ。

この本で扱うのは、ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、ディスレクシアなど、教育現場で問題が指摘される発達障害と、ウィリアムズ症候群といった遺伝子疾患が明白な発達障害で、障害の程度はちがうがいずれも知覚認知に歪みがあることで共通している。

障害によってそれぞれ独特の視覚認知機能をもち、その背景には視覚や認知にかかわる脳の特異性があることがわかってきた。つまり、視覚認知から問題をよみ解くことができるのだ。

中でも自閉症は近年、自閉症スペクトラム障害とも呼ばれ、その特性は広く個性として私たちの中にも浸透している。

自閉症は、1940年代に児童精神科医レオ・カナーによって最初に記述された、統合失調症ではない古典的な自閉症から始まり、知的障害を伴わないアスペルガー症候群、映画「レインマン」で有名になった特殊技能をもつサヴァン症候群まで、多様な状態がある。自閉症と似た個性をもちながら診断されず、個性として埋もれている人たちの発達も、視野に入れていく。

こうした「発達障害」は、発達の過程で問題が明確化していく。発達と連動する障害を浮き彫りにするためには、後天的に障害を受けた脳損傷患者や認知患者と比較していく必要がある。

効率を求め、平均的なマニュアルで教育することに慣れ切った人たちには、発達障害の人と接するのはやっかいだろうが、人を育てるということは、本来そういうことだ。

実験に参加したその家族も、その後いろいろあったとしても、赤ちゃん実験で学んだことを忘れずに、ハッピーな関係へとたどりついていることを信じている。