『真田丸』を100倍楽しむ基礎知識
〜これを読めば大人気の理由がよくわかる

週刊現代 プロフィール

列強に「人質」を出して生きのびる

信繁は上杉家へ物語では少し先の話だが、信繁は景勝のもとで家臣の直江兼続らとも親交を深め、信頼を得る。人質期間は教育的意味もあった

『真田丸』で頻繁に登場するのが、「人質を誰にしようか」と悩むシーン。武家社会では、人質は重要な外交手段であり、常識だった。誰かの家臣となる場合や同盟を結ぶ場合には、「裏切りません」という証として、相手に一族の女性や子供を預けなければならなかったのだ。つまり「人質の行き先=その時の(表向きの)上司・提携先の家」と考えてほぼ差し支えない。

江戸時代、徳川幕府は諸大名の妻子を江戸に集め、かつ大名には「参勤交代」で1年おきに領地と江戸を行き来させていた。これは戦国時代の人質システムを、より大規模にしたものに他ならない。

松は織田家へ 武田を裏切った夫・小山田茂誠を救うためにも織田の人質に志願した松だが、光秀の謀叛がすべてを狂わせた。当時は必要とあれば、女子供も容赦なく磔刑にされた

まだ弱小武家にすぎない真田家の人々も、この人質システムに運命を翻弄される。

例えば信幸・信繁の姉である松(木村佳乃)は、真田が正式に織田の臣下となったことを受けて、第4回で人質になることを志願し、織田の本拠地・安土へ赴いた。だが、その後すぐに織田が滅び、明智光秀の軍勢が安土へなだれ込んだため、決死の逃避行を余儀なくされてしまう。

また、織田の臣下となった昌幸の「直属の上司」にあたる武将・滝川一益(段田安則)は、信長亡き後、真田の忠誠を試すため、やはり人質を要求してくる。昌幸が悩んだ末に白羽の矢を立てたのは、自身の母・とり(草笛光子)だった。とりは真田家重臣の娘・きり(長澤まさみ)とともに、滝川が本拠とする沼田城へ出発するのだが……。

とり、きりは滝川家へ 織田家の重臣・滝川一益は、信長亡き後、再起の道を模索する。ただ、一益のもとに母を差し出した昌幸だが、この時点では内心、まだ誰につくかを決めかねていた

のちには主人公・信繁も人質に出されることとなる。紆余曲折あって昌幸は上杉の陣営につくことを決意、当主の上杉景勝(遠藤憲一)に打診する。景勝の出した条件は、信繁を人質に差し出すことだった。このとき、信繁は19歳。

もちろん、もし裏切れば人質は殺される。かくも冷徹な戦国時代の人間関係―だが、その裏側にある心模様も、ドラマの重要な見どころだ。