先にも触れた通り、真田家は今のところ、一国一城の主たる大名ではなく、土着の豪族である「国衆」と呼ばれるポジションにいる。武田のような大名が大企業の経営者だとすれば、昌幸をはじめ、室賀正武(西村雅彦)、出浦昌相(寺島進)たち旧武田家臣の国衆は中間管理職、あるいは中小下請け企業の社長、といったところだ。
第5回では、昌幸がこう漏らすシーンがあった。
「わしらのような国衆には、力のある大名にすがるしか、生き残る道はない」
「誰が最後の覇者になるか、しかとこの目で見極めて、食らいついてやるわ」
武田という「勤め先」を失い放り出された国衆たちは、昌幸のリーダーシップのもと意見を交わし、新たな主と活路を模索する。ただし表向きは一致していても、そこは戦国の世。生き残るためには、ときに仲間を欺くことさえある。この国衆同士の駆け引きからも目が離せない。
彼ら国衆は武士ながら、ふだんは領地の農民たちと交わって暮らしている。武士と農民の区別は、厳しい身分制度が確立した江戸時代に比べ、まだかなり緩やかだったのだ。
また農民にも、普段は農業をしているが、戦の際には農具や手近な武器をとって馳せ参ずる「地侍」と呼ばれる人々が少なくなかった。信繁が恋する女性・梅(黒木華)の兄である堀田作兵衛(藤本隆宏)が、その代表格。暮らし向きこそ豊かではないが、彼らもまた、真田に仕えるりっぱな家臣の一員である。