2014年、神奈川県川崎市の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」(株式会社積和サポートシステムズ)で、86歳~96歳の入居者3名が相次いでベランダから転落死した衝撃の事件が報道され、2016年2月15日、3人が転落したすべての日に夜勤を担当した23歳の男性職員が殺害を認めた。
この男性職員は他の入居者女性から財布を盗んだとして逮捕され、懲戒解雇されていた人物だ。施設ではこの事件の他にも、複数の介護職員の暴力や暴言、日常的な虐待が表面化しており、川崎市から3ヵ月間の行政処分を受けている。
負の連鎖が吹き荒れる中で、介護報酬減が実行され、介護職たちは生涯貧困に近い貧しい生活を余儀なくされる。介護は現場で働く「人」がすべてである。限度を超えた人材の質の低下で、今、介護という社会保障は、本当に危険な状態になっている。
将来日本の高齢者の9割が生活保護水準の生活となる“下流老人”、非正規雇用の蔓延で実家から離れられない現役世代(35歳~44歳)が305万人に膨れあがり、親子共々で経済的貧困に陥る“老後破産”など、これからの老後と社会保障が大きな話題だが、今、本当にヤバイのは「介護崩壊」なのだ。
要介護高齢者たちが「いつ殺されるかわからない」という危険な最終段階に突入する前に、いい加減に「崩壊する介護現場」の現実を見つめることが必要なのだ。
(つづく)