ルポ・「地獄」の介護現場~虐待・セクハラ・逆ギレ……職員の「質の劣化」が止まらない

絶望的な負のスパイラル
中村 淳彦 プロフィール

その結果、妻の精神は壊れて、普通の日常生活が送れなくなった。妻は精神病院、私は警察と弁護士事務所に通うはめになり、子どももAの脅迫のターゲットにされたので、小学校の担任と校長に事情を説明した。

もはや仕事どころではない。最終的には私がAを提訴して、ようやくストーキングはおさまった。この騒動で1ヵ月以上の膨大な時間と、150万円ほどの費用がかかっている。

 施設開設前からトラブルまみれの毎日

これは、私の身に起きた最も大きな騒動だが、介護にかかわる7年間、介護職員たちが起こすトラブルにふりまわされ続けた。

私が介護にかかわったのは2008年。フリーライターとして働いていたが、相次いで雑誌が廃刊し、このまま仕事を継続するのは無理だろうと判断した。超高齢化社会が目前に迫るのは誰もが知ること。 “介護” ならなんとかなるかもと、最も参入障壁の低かったデイサービスを立ち上げた。

介護保険法施行で「施設運営は誰でもOK」という強烈な規制緩和が繰り広げられ、街のラーメン屋から大企業まで介護の“か”の字も知らない異業種参入が現在進行形で続いている。

デイサービスを始めて間もなく、介護という産業の異常さに気づいた。

最初から普通ではなかった。開設前の職員の求人面接に遅れずに来た人は半数程度。来たとしても「できるだけ楽な仕事をしたい」「すぐに有給休暇を全部欲しい」「朝、起きれるかわからない」など、常識を逸脱したことを平気で言う人がたくさんいた。

さらに開設後の現場では、職員たちによるイジメやパワハラ、セクハラが日常茶飯事だった。心身ともに疲弊し尽くした私は、2015年3月、運営する介護保険施設(小規模デイサービス)の「廃止届」を行政に提出した。書類は受理されて、念願だった介護という地獄からようやく解放された。

施設の閉鎖と会社の解散を決めた後も、女性の介護福祉士が売春と横領の騒動を近隣で起こしたり、非常勤で働く介護職員の不倫問題でトラブルになったりなど、最後の最後までめちゃめちゃな状態で幕を閉じている。

どうして「豊かさ」や「幸せ」を提供するはずの福祉施設で、このようなことが起こるのか? 私は自分の身にふりかかったトラブルや惨状の原因を深く考えるようになった。大きな原因の一つは、限度を超える人手不足といえる。