堺雅人とディーン・フジオカを大抜擢
〜NHK敏腕プロデューサー「目利き力」の真髄

週刊現代 プロフィール

前述したディーンは、佐野氏の描いた五代像をロジカルに研究し、さらに強固なものにした。一方、堺はディーンとはまた、違うタイプの役者だという。

「堺さんもまた、家定の膨大な量の史料を読み込んでくれました。ただ堺さんはそうして得た知識を、いったん全部捨て去ってしまう。それから堺さんなりの家定像を作り込んでいくんです」

佐野氏には、印象的な場面がある。開国を要求するアメリカ総領事・ハリスと家定が面会する回だ。正座することをあくまでも拒む米国の外交団。しかし日本では将軍が立って相手に接見するなどありえない。そのままでは天下人である将軍が米国領事に見下ろされることになってしまう……。頭を悩ます幕閣をよそに、ハリスの背丈が六尺もあると聞いた篤姫は、畳を何枚も重ねその上に座ることを思いつく。家定は積み上げられた畳の山の上で、突如歌舞伎の見得を切るかのように手を広げ、こう言い放つのだ。

「遥か遠方より使節をもって書簡の届け来ること、ならびにその厚情、深く感じ入り満足至極であーる!」

「真面目な場面なのに、『むらむらしてしまって』つい、うつけてしまう。この時の堺さんが本当にうれしそうなんです。まるで少年のように笑っていましたね。

その演技を見て、ああ、家定ってこんなふうに笑っていた人なのだ、と素直に思いました。あの時、堺さんは脚本家の田渕久美子さんと僕が描いていた家定のイメージを突き抜け、より広げてくれたんです。

堺さんとのお付合いは今も続いていて、昨年末の紅白歌合戦でもお話する機会がありました。『篤姫』の思い出話と『真田丸』への意気込みを伺いました。また関連史料を読み込むのは一苦労でしょうが、『真田丸』のために主人公・真田信繁そのものに成り切って楽しんでいらっしゃいましたね」

ドラマのキャストは一期一会

「『あさが来た』と『篤姫』には、意外な結びつきがあるんです」と、佐野氏は微笑み、小ネタを披露してくれた。

「五代が登場するシーンでは、BGMにエレキギターを使った音楽が入ります。初めて聞いた時は、朝から、しかも時代劇でエレキギター……と唖然。でも、編集してみるとエキセントリックな五代とディーンさんのイメージにこの音楽はぴったりでした。スタッフの間では『五代友厚のテーマ』と呼ばれています。

実は『篤姫』の時にも大久保利通(原田泰造)の登場でエレキギターの音楽が流れていました。『あさが来た』でも描きましたが、五代と大久保は固い絆で結ばれた盟友です。そう考えると、不思議な縁を感じますね」