堺雅人とディーン・フジオカを大抜擢
〜NHK敏腕プロデューサー「目利き力」の真髄

週刊現代 プロフィール

堺雅人の不思議な笑顔

天然気味な真田信繁役が好〔PHOTO〕NHKホームページより

その人の才能や個性を見出し、役柄へと結びつける、「人の目利き」ともいえる力がプロデューサーには求められる。佐野氏は続ける。

「プロデューサーになる前は、演出などで長く現場に携わっていました。NHKでは、ディレクターもプロデューサーも、同じ放送職として採用され、共に修業します。道が分かれるのは30代半ばくらいからですね。

人を見る目、作品を見る目、というのは現場を知ったうえで、俯瞰的に引いて見ることで養われていくのではないかと思います。

現場は、スタッフやキャストの熱気が満ち、まるでエンジン。それをもっと大きな仕組みで見てみるんです。みんなで同じ方向に進んでいるつもりでも、進む方向が1度や2度ずれているかもしれない。そのずれが果たして良く作用するのか、それともいずれ悪影響となって現れてくるのか、プロデューサーは判断しなければなりません。

現場にいるとつい、その人の『今の姿』にだけ注目することが多い。それだけでなく、この役者さんはこうした感情も表現できるんじゃないか、もっと別の役も合うんじゃないかと考えるようにしています。ただ、普通にドラマを見ている時もそんなふうに見てしまうので、今では落ち着いて見られるのは海外作品くらいですね(笑)」

そんな佐野氏は、過去に手がけた作品でも、逸材を見出している。

'00年以降の大河ドラマ最高視聴率を取った『篤姫』('08年)。この時、13代将軍徳川家定を演じたのが、堺雅人だ。権謀術数渦巻く将軍跡目争いの中、家定はわざと暗愚のふりをして生き延びようとする。寝所で御台所の篤姫(宮崎あおい)だけに見せる聡明な素顔と、おつきの者や幕閣の前でのうつけっぷりという、堺の鮮やかな演技の切り替えに、誰もが目を見張った。

この家定役で芝居巧者として評価が定着した堺は、以後『リーガルハイ』『半沢直樹』と立て続けにヒットを連発。現在放送中の主演作『真田丸』も大河ドラマとして久々に好調なスタートを切っている。

「能あるタカは爪を隠す。僕はそんな人物が大好きなんです。

家定は飄々としながらも後継問題に悩まされ、どこか諦念を抱いている。少女漫画に出てくる憂いを帯びたヒーローのようなイメージだったんです。何を考えているのか顔の表情からは読み取れない—そんな難しい演技ができるのは、堺さんしかいないとキャスティングは即決でした。堺さんが大河『新選組!』で演じた山南敬助も、笑顔だけで悲しみや怒りを演じ分けていたと評判でしたからね」