堺雅人とディーン・フジオカを大抜擢
〜NHK敏腕プロデューサー「目利き力」の真髄

週刊現代 プロフィール

「『あさが来た』を企画するうえで、誰が五代友厚を演じるかは、早くから重要視していました。というのも、五代友厚は歴史的存在ですが、これまでほとんど映像化されていません。大河ドラマでも、薩長の志士が活躍する場面でちょこっと映る程度。ですから、視聴者には何の先入観もありません。

同一視するのはおこがましいですが、司馬遼太郎先生が『竜馬がゆく』で書いた坂本龍馬が、日本人が共有する龍馬像になったように、『あさが来た』が話題になれば、その中での五代友厚が、日本人にとっての五代友厚像になるのではないか。そう考えると、プレッシャーは相当なものでした」

日本人離れした異質さ

脚本家の大森美香氏と議論を重ねて練り上げた五代友厚像。それは、大阪商人の世界に入ってきた、異質の薩摩藩士という姿だった。

「幕府の後ろ盾を失い、一度は陰った大阪経済を、また引き上げる存在です。だからこそ、日本の演劇界とは異質な空気を持っている方に演じてほしかった。

始めは、狂言や能の世界の方を考えていたのですが、ふと日本でなく世界で活躍している方に目を向けてはどうだろう、と。そうして辿り着いたのが、ディーンさんだったんです。

一言で言えば、彼の魅力は『異質さ』です。なにか普通の人とは違う。

'15年1月、オファーのために初めて彼を訪ねました。目が本当にきらきらして引き込まれたのを覚えています。『ICHIHASHI』では、うつろな目をしていたのに……。この人は目で演じる方なんだと思いましたね。

彼なりに五代友厚を調べてくれていて、どういう人物として描くのかを質問されました。そのやり取りがとても論理的で舌を巻いた。日本には『黙っていることが美徳』という風潮がありますが、長く海外でやり合ってきた彼は、プレゼンテーションが実に巧みなんです。そうした日本人離れした異質さが、欧州に留学し経済を学んだ五代友厚役に、必ずはまるはずだと確信しました」

佐野氏の予感は的中し、ディーン・フジオカという俳優だけでなく、五代友厚という人物にもスポットライトが当たるようになった。

年明けには、五代の名が歴史上最も知られることになった「北海道開拓使払い下げ事件」も描かれた。

「北海道開拓事業に乗り出した五代が、官民癒着の疑惑をかけられ、大阪商法会議所会頭を辞任することを決意する。しかし、新次郎や榮三郎の助けのもと、大阪商人からの信頼を取り戻し、会頭辞任を撤回。五代は力強く、こう断言します。

『みなさん、ほんまおおきに。やっぱりここは日本一の町や。私は決めました。生涯をかけて、この町の繁栄のために尽くします!』

僕は昔からアメリカ大統領の就任演説が大好きなんです。堂々と国民の前で熱弁を振るい、聞いていると、なんだか世界中が良くなるんじゃないかというような気持ちになる。

この場面もそんなイメージを持っていましたが、ディーンさんに伝えてはいませんでした。けれど、ディーンさんは、まさに大統領のような気迫で語り始めた。ディーンさんと五代がここまでシンクロしたんだと胸が熱くなりました」