なぜ欧米人と日本人の感性はここまで違うのか?
ことばと脳の「深~い関係」

エッセイスト・黒川伊保子さんの「わが人生最高の10冊」

現実と地続きの「別の世界」

歳を重ねた女性の魅力満載な『おばちゃま』に対して、『あしながおじさん』は、若い女性が自らの才能を信じて道を切り開く物語。少女時代からのバイブルで、折にふれて読み返す一冊です。私は、わりとめげない性格なんですけど(笑)、こういう私を作ったのはこの本だと思っています。

主人公のジュディは、学費を出してもらっているあしながおじさんに対して、決して従属しないんです。媚びもしない。しかし受け入れるべきところは受け入れる素直さを持っているから可愛い。主張の仕方、引いても負けにならないセリフ回しなども本当に上手くて、私はすべてを自分のものにしました(笑)。

3位は、私の研究者人生を変えた『日本人の脳』です。角田忠信先生はこの本で、母語によって脳の回路が違うことを明らかにしています。

単純化して言えば、日本語で育った脳は母音を通常左脳で聴くが、欧米語・中国語・韓国語などで育った脳は、母音を右脳で聴く。この違いによって、木の葉や虫の音など、自然界の音に情緒や文学性を感じる日本の文化が生まれたというのです。小津安二郎監督の映画で主人公の心象を表すように鳴くヒグラシの音を、アメリカ人が「うるさい」と言ったのは有名な話ですね。

男女の脳も違いますが、ことばによっても脳は違ってくる。その後の私の感性分析に大きな影響を与えてくれた1冊です。

10冊の中には、大好きなファンタジーを2冊挙げています。『図南の翼』は、ファンタジーに邦人作家はありえない、女の子主人公はありえないという二つの思い込みを吹き飛ばしてくれました。

理系なのにファンタジーが好きなの? と意外な顔をされることもありますが、「別の世界」は、物理学的にも存在するんです。例えば人間の脳波をつくる量子波動は時空を超えることがわかっている。ここで詳しい説明はできませんが、ファンタジーは私にとって、現実と地続きの世界なのです。(構成/砂田明子)

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