ついに建て替えが決まった「横浜・傾きマンション」住民に提示された破格の補償内容とは?

週刊現代 プロフィール

「われわれの購入時よりも建材費などが高騰しているので、当時の価格の約1・2倍で買い取ると提示されています」(三井不動産と交渉した住民)

つまり、全棟建て替えとなった場合、住民は仮住まい費用などをすべて負担してもらい、慰謝料をもらったうえ、新しくきれいなマンションに再入居できる。また、再入居せずに転出するとしても、慰謝料は受け取れるし、部屋は購入価格より高い価格で買い取ってもらえるということである。

過去の欠陥マンションの事例を見れば、売り主が責任逃れに終始して、慰謝料さえもらえない住民泣き寝入りのケースがほとんど。それらと比較すれば、今回の補償は「超」がつくほどの好条件と言える。

それでもくすぶる不満

不動産コンサルタントさくら事務所会長の長嶋修氏は言う。

「今回のケースは、経済合理的に考えて全棟建て替えするのが一番住民には得になります。『傾斜マンション』というレッテルも張られなくなるし、すでに築9年ほどだったものが新築に生まれ変わるので、実質的な資産価値も上昇が見込める。三井不動産も、さすがにこんなに早く合意がまとまるとは思っていなかったでしょうが、住民たちが全棟建て替えで決議したと言えば、『決議に応じます』と答えざるを得ない。ここまで合意形成できた住民の方々は本当にすごいと思います」

マンション住民は、三井不動産が提示してきた補償以上のものまで要求できる可能性がある。欠陥住宅被害全国連絡協議会幹事で弁護士の河合敏男氏は言う。

「今回、マンションの管理組合はコンサルタントを雇っていますが、これらのコンサルタントを雇う費用も三井不動産側に請求すべきでしょう。さらに、今後は建て替え交渉などで弁護士を雇う必要も出てきますが、この費用も全額請求したほうがいい。補償される損害賠償の額は被害にあわなければ負担する必要のなかった金額すべてですから、これらも必要経費と考えるべきです」

もちろん、住民たちはこうした得か損かの「銭勘定」だけで一致団結してきたわけではない。

実はマンション管理組合は昨年11月にも住民アンケートを実施しており、その際には「全棟建て替え」を希望していたのは476戸。それが今年1月のアンケートでは3割以上も賛成数が急増した背景には、三井不動産への強い憤りがあった。管理組合理事の一人は言う。

「三井側はデータ改竄が明らかになり、住民説明会が始まった当初、『杭を補強すれば問題ない。資産価値も下がらないので補償は一切しない』と明言していた。それなのに、世間に騒がれだした途端、それまで一度たりとも説明に来なかった三井不動産レジデンシャルの社長が『全棟建て替え』を、住民になんの断りもなく表明しました。

さらに、三井住友建設の社長にいたってはその後に行われた住民説明会は体調不良を理由に欠席した。世間向けのパフォーマンスと住民への対応では態度がまったく違うと、住民の怒りが高まったのです」