アメリカ人にとって「大統領」とはいかなる存在か? トランプ旋風の行方を考える

大統領選、いよいよ幕開け!
渡辺 将人 プロフィール

「女性大統領」誕生を阻んできたもの

もう1つのクエスチョンは、「女性」大統領だ。フェミニズム運動の総本山のようなアメリカが、韓国にも台湾にも先を越されているのは、アメリカ大統領に求められる資質が、諸外国のリーダーのそれと異なることに加え、内政上の要因も関係している。

民主党側では、1970年代以降、女性解放運動が人工妊娠中絶の権利を求めるシングルイシュー運動化したことで、女性の政治進出が即ち中絶権利運動に違いないという偏見を社会に植えつけた。中絶だけは認められないカトリックが多い民主党穏健派が内部で女性候補の足を引っ張ってきた。

共和党側は別の事情で女性が台頭できなかった。例えば、2016年のフィオリーナにしても、女性票で有利な民主党に遅れをとらないように(共和党は男女差別の政党だとレッテルを貼られないように)仕込まれた候補という噂は絶えない。「共和党のヒラリー」が必要とされた。

しかし、共和党の女性候補の勝率は依然低い。長年アイオワ州共和党の地方組織に関わってきた保守派の女性は、女性大統領が出ない共和党側の事情についてこう語る。

「キリスト教保守の女性にとって保守的な態度として理想とされるのは、男性を支えること。保守的な女性は出産して男性を家事で支えるというのが本文と考えているので、女性がむやみに社会進出したり、大統領になることをそもそも望んでいない。往々にして女性の真の敵は男性ではなく女性だが、共和党から女性候補として出る場合も同じ」

2000年のエリザベス・ドール、2012年のミシェル・バックマンなど、適宜、女性候補が出るが、共和党にも女性候補者が存在するアピールの役割を務めたら、静かに消えていく運命にあった。

例外は2008年副大統領候補のサラ・ペイリンだ。しかし、マケインに一本釣りされて副大統領候補になったペイリンは、保守票が取れなければ勝ち残れない予備選を経ていない。口では副大統領なら女性でもいいと言っていても、マケインの体調にもしものことがあれば、ペイリンが大統領になってしまうことを懸念した有権者は沢山いた。

軍役がマストの要素ではなくなったとしても、大統領は最高司令官であり、ある種の「マッチョ信仰」も完全に消えてはいない。実際、オフレコが条件であれば、「感情的で非論理的」で「生理的な事情も男性と違う」と偏見をもたれる女性が、核のボタンを握ることには懸念を示す共和党の男性有権者は少なくない。

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