陛下の前で涙を流した彼らは何者か
~放置され続けたフィリピン「無国籍邦人」という問題

北島 純 プロフィール

戦後置き去りにされた問題のひとつ

実態調査の拡充はもちろん大切なことであるが、思い切った政治判断によって特別法を制定し、日本フィリピン両政府が協力して名簿を整備した上で、国籍回復における事実認定の基準を緩和したり、あるいは国籍回復に匹敵する何らかの名誉回復手段を実現したりするといった、実効性のある現実的な政策が必要ではないだろうか。

「戦争中は皆さんずいぶん苦労も多かったと思いますが、それぞれの社会において良い市民として活躍して今日に至っていることを大変うれしく、誇らしく思っています」

1月28日、ホテル「ソフィテル・フィリピン・プラザ・マニラ」のロビーで、天皇陛下は、86人のフィリピン残留日系2世に対して、お言葉を述べられた。

戦後70年が経った今でも、あの大戦で生じた問題が未解決のままで推移している。その中でも最大の問題の一つが、このフィリピン残留日系2世の「無国籍」問題だ。

実は約20年前、筆者はフィリピンの或る小島を訪れた際、旧日本軍人を祖父にもつフィリピン人から「無国籍の問題」や残留日系人の辛酸を舐めた生活を初めて教えてもらい、衝撃を受けた。

今回の天皇、皇后両陛下のフィリピンご訪問を一つの契機として、この問題が広く関心を持たれることを望む。

北島純    一般社団法人経営倫理実践研究センター(BERC)主任研究員。東京大学法学部卒業。内閣官房長官、自民党経理局長等の秘書を経て、2013年からBERCで「外国公務員贈賄罪研究会」を担当。著作に『解説 外国公務員贈賄罪』、「中国における贈収賄罪の構造と日本企業のリスク対策」(中央経済社)など