イトーヨーカ堂社長が「逆ギレ辞表」を叩きつけるまで一部始終

鈴木敏文会長に叱られて
週刊現代 プロフィール

しかも、ヨーカ堂の改革の遅れの一因が鈴木会長自身にもあるとすれば、その胸中は複雑だったに違いない。流通業界に詳しいプリモリサーチジャパン代表の鈴木孝之氏が解説する。

「ヨーカ堂のような総合量販店(GMS)は完全に役割を終えた業態です。背景には各分野で専門店が台頭したことがある。同業他社の中でも、ヨーカ堂の改革は遅れています。それはセブン-イレブンの成長発展で、グループ全体の業績が拡大したことからヨーカ堂の落ち込みに危機感を持てなかったことが一因です。

実はこうしたGMS改革は鈴木氏がヨーカ堂社長だった10年以上前からの課題でした。しかし、鈴木氏は『GMSは普遍です』と言い続け、ヨーカ堂改革で実績を挙げてこなかった。それは復帰する亀井氏も同じことです」

そんなにオレが悪いのか

危機感がいよいよ高まったところで世代交代、戸井氏の登板となった。だが消費増税という逆風が吹くなか、全国に散らばるGMSの改革を進めることは一朝一夕で成果が出るほど単純なミッションではない。前出のヨーカ堂元幹部が語る。

「ヨーカ堂は出店地の標準化ができていません。店舗の規模は1000㎡台から3万㎡までとバラバラ。コンビニほど均一化されていないのに、チェーンストア方式を無理矢理導入して失敗した。

本来ならば、思い切ってヨーカ堂自体を会社分割したほうが、改革が早まるのでしょうが、それも鈴木会長が許してくれない。『160しか店がないのに、一緒にできないわけがない。セブンは2万店もあるぞ』と言い張るのです。これだけの規模の店舗を改革するには5年はかかりますよ」

戸井氏は常務時代より若手アイドルグループAAAをCMに起用して顧客層の若返りを図るなど、様々な改革を進めたが、鈴木氏からのプレッシャーは強まるばかりだった。その理由はいくつか考えられる。

一つは「モノいう株主」として名高い外資系ファンド、サード・ポイントがセブン&アイの大株主になったこと。

同ファンドは過去にもソニーの大株主として映画・娯楽部門の分離を求めるなど、企業の経営に積極的に関与することで知られている。サード・ポイントは、セブン&アイの利益が世界的な同業他社と比較して低すぎると指摘し、ヨーカ堂を切り離すよう要求しているのだ。

「鈴木会長といえども株主の影響を無視できず、戸井氏への要求がエスカレートしたことも考えられる」(流通業界紙記者)