表面上は「ダブル選はありません」と否定を続ける 〔PHOTO〕gettyimages
安倍総理の政治家人生の「総仕上げ」へのシナリオが動き始めた。野党の不意を突き、党内をまとめあげる。「安倍一強」を強固にし、悲願の改憲へ――。すべてはこの夏のダブル選挙から始まる。
勝てれば何でもいい
NHK大河ドラマ『真田丸』の第1話に、こんなシーンがあった。
織田信長に追い詰められつつある武田家の臣下として、真田昌幸(草刈正雄)は声を励まして武田勝頼を鼓舞し、自らの家族の前でも、微笑みながら力強く断言する。
「安心せい。この真田安房守がいる限り、武田(家)が滅びることは、決してない」
だがその直後、息子の真田源三郎(大泉洋)と源次郎(堺雅人)のみの席でこう言い放つのだ。
「武田は滅びるぞぉ」
表に出る言葉が真実とは限らない―—。
戦国屈指の策士として知られる真田昌幸のキャラクターをうまく示した演出である。しかし、それは何もドラマや歴史の中だけに限らない。
表が裏、裏が表。虚と思えば実、実と思えば虚。臨機応変、掌返し。これは、何百年たっても変わらない人の性、その世の象徴たる「まつりごと」の本質というものだ。
では、見た目の印象と違って意外と策士な現代の「まつりごと」の担い手、安倍晋三総理は、新年を迎えた今、どんなことを考えているのか。
1月4日、安倍総理は、通常国会初日を終え、記者会見に臨んだ。そこで総理は、こう断言した。
「(衆参)ダブル選はまったく考えていません」
1月10日に放映されたNHK『日曜討論』でも、笑顔を浮かべつつ、
「残念ながらダブル選挙はありません」
と、やはり否定した。
だが、それは果たして「真実」なのか。
戦国の荒波に何代も揉まれ続けた真田という血族の結晶が昌幸・信幸・幸村父子であるように、安倍総理もまた、祖父が岸信介、大叔父が佐藤栄作、父が安倍晋太郎という政治血脈の延長線上に存在する。
生き残り、勝ち抜くためには変幻自在であらねばならない。祖父や父らの姿を見て育ち、それを誰よりも知っているのは、安倍総理なのだ。
実はいま総理は、表向きの発言とはまったく異なり、側近たちに対してはこう打ち明けている。
「ダブル選をしたい」
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。
「安倍総理の悲願は、どこまで行っても『憲法改正』です。この悲願成就のためには、さらなる世論の支持と、総理総裁任期の延長が必要になる。
ネックになるのは、'18年に自民党総裁の任期が切れることです。現在、総裁任期は最長で2期6年ですが、安倍総理はこれを3期9年まで延ばし、東京五輪後の2021年まで政権を維持したいと考えている。
それには、今このタイミングで衆参ダブル選挙に踏み切って圧倒的な勝利を収め、党内からの反対を封じ込める『力』が必要なのです」