女性装の東大教授が見つけた「新しい家族」のカタチ

結婚「制度」は本当に必要か?
小野 美由紀 プロフィール

同性婚は「家族の印」

2015年は、同性婚について世界的に大きな変化のあった年だった。アメリカでは同性婚が認められ、日本でも、世田谷区・渋谷区などが同性パートナーシップを認める条例を出した。安冨は結婚制度には懐疑的だが、自身が女性装をはじめて以来、同性同士の結婚について新たな発見があったと言う。

「最初はさ、同性同士で結婚したがる人を見ても、“結婚なんてそもそもクソだから、無理してしなくていいじゃん”って思ってたんだよ。だって、私とつれあいは男女だけど、制度で認められる必要を感じないから結婚届は出してないんだもん。

 

でも、違うんだよね。みんな家族が欲しいんだよ。同性だと、家族であることを証明する手段が“結婚”しかないから、結婚したいんだよね。もしも違った形で公的に認めてもらえるなら、別に結婚である必要はないんだと思う。制度的に認められていないってことが単純に不愉快なんだよ。だから男女で結婚を認めるなら、同性でも認めるべき」

安冨は、5年間で1万人のLGBTポートレート撮影を目指すカミングアウト・フォト・プロジェクト「OUT IN JAPAN」に参加している   Photographed by LESLIE KEE

盲点があるからこそぶつかり、関係ができていく

現在のパートナーの女性は25年来の親友であり、安冨と同じく大学の教職に就いており、共同研究者でもある。お互い苦境から逃れて、10年以上前から、パートナー関係が始まった。安冨の“変化”を、彼女はどう受け止めたのだろう。

「私が突然、猛然と女物の服を買いはじめたから、パートナーはボーゼンだよね。でも、それは女性装するからショックというよりも、服が急に増えはじめたから迷惑って感じだった(笑)。でも『絶対に私を止めないで!』と言って、女物を買い続けたら、横目で見ながらも受け入れてくれた。

彼女は子供の頃から猫を飼っていて、“生き物は止めても聞かない”ってことを感覚として知ってたんだよね」

カミングアウトしたというよりは、相手も特に止める気はなく、自然な流れで受け止めてもらえたといったほうが正しいかもしれない。

「お互いに傷ついてたから、互いに引き上げる付き合いができたんだよね。人間なんだもの、お互い自分についての盲点があるんだよ。盲点があるから、まっすぐ走れずにぶつかる。でも、ぶつかったところで自分の盲点に気づくでしょう。そうやって盲点を克服しあうなかで、関係ができていくんだよ。

現在は大阪と東京を行ったり来たりしつつ、パートナーの家族と多くの時間を過ごす。離婚した元妻の間には2人の子どもがいて、定期的に会っている。安冨の子どもと、パートナーの子どもとの間にも、交流があるそうだ。そう聞くと、固定観念に囚われず、禁止や抑制のない家族関係を築いているように思えるが……。

「子どもとぶつかることもあるし、今のパートナーともやりあってるよ(笑)。誰だって自分の盲点をつっつかれたら怒るでしょ? だけど、お互いぶつかって、修正して、変化しているからこそ、10年以上続いているんだと思う。ぶつかる機会がないまま、結婚って制度に甘えて、お互いに夫婦を演じていると、いつかクラッシュする」