なぜ日本の男は苦しいのか? 女性装の東大教授が明かす、この国の「病理の正体」

小野 美由紀 プロフィール

日本の男を苦しめる「ホモマゾ社会」と「立場主義」

「母親だけじゃないよ。日本は戦時中の軍国主義のマインドのままで、表面だけ民主主義に変わっちゃったからね、精神は復員できていない。女は銃後、男は戦場。その証拠に、日本の社会って、基本的にホモマゾ(ホモソーシャルでマゾヒスティック)じゃない。

たとえば会社組織って、おっさんが集まっていちゃいちゃしてるでしょ、昼も夜も休日も。ずっと一緒にいて、それでいて集団マゾなの。一緒に我慢しようね、みたいな。

つまりは『貴様と俺とは同期の桜』っていう日本軍のモードのままなのよ。表面上は自由で豊かでも、腹の中は、いまだに戦時中なわけ。酒飲んで、一瞬だけプレッシャーを忘れて、また元のホモマゾの中に戻って、の繰り返し。だから日本人の男はこんなに生きづらい」

軍国主義によって構築された「ホモマゾ社会」。それは、第二次世界大戦以降、日本が温存し続けている「立場主義」システムの一部だ、と安冨は続ける。

「立場っていう単語は、他の言語に翻訳できません。日本独特のもの。それが日本人をがちがちに縛り付けて”自分でないもの”にしている」

立場を失くす、立場を守る、立場上できない……何の疑問も持たずに、私たちが普段使っている言い回しだ。しかし、「立場」とは何か、いざ考えてみると、上手く説明できないことに気づく。立場にいる“私”は“私”ではないのか? 立場って、一体、なんだろう?

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「『立場主義』システムは明治維新後に『家制度』に変わるシステムとして形成されたと私は考えている。それ以前は家単位で動員されたものが、徴兵制で個人単位になった。

そうすると『お家のために命を捨てる』というイデオロギーが失われるから、代わりに靖国神社が作られた。それを変だと思わせないために、学校教育が全国民に施されて、各人は『家のかわりに、自分の立場を守るために、命を捨てる』ようになった」

無理やり徴兵して、“兵士”と言う立場、“国民”という立場に依拠する形で人を行動させる。実に曖昧な概念なのに、いや、それゆえにこそ、“立場”は日本の社会で物凄いパワーを持ち、人を抑圧している。

立場主義の例として、安冨はSNSでの振る舞いを挙げる。日本人は実名でfacebookをやって、立場上、当たり障りの無い事を書いて、食べ物の写真ばっかりアップする。一方で、匿名でやっているTwitterでは、人をさげずんだり罵ってみせる。他の諸外国ではこういった極端な二面性は見られない。

「立場を守るために、溜まったストレスをどこかで発散しないと気が済まないんだよ。それが自分に向いたら自傷や病気になるし、外に向いたら、他人や家族への攻撃になる。ネトウヨとか、ネトサヨなんてのがあるのも日本だけ」