菅官房長官が語った「安倍総理との本当の関係」

"影の権力者"のホンネ
松田 賢弥

「総理、この内閣がつまづくとしたら…」

菅は、安倍とは肝胆相照らす仲で、ナンバーツーとして支えることこそ本望だという。これは菅の本心のすべてだろうか。その言葉を訝しく思っているわけではない。しかし、果たして菅は安倍と心中する運命を歩むのかという疑念は拭えない。

当選一回生ながら師・梶山静六を担いで総裁選に邁進して以来、政治家の毀誉褒貶をあまた見て、麻生政権では小沢を立役者とした民主党に政権交代という煮え湯を飲まされ、A級戦犯と白眼視されるといういわば地獄すら見てきた菅の言葉にしてはキレイ過ぎるように思えるからだ。

第一、安倍と菅では育った境遇が違い過ぎる。菅は安倍をも乗り越える権力を握ることをじっと胸の奥で滾らせているのではないだろうか。そうでなければ、豪雪の秋田から上京し紆余曲折の末、政治の世界に飛び込んだ菅自身の這い上がってきた人生は完結しないように思えるのである。

もちろん、菅は安倍にただ唯々諾々と従ってきたわけではない。その芽をいくつか拾うと、たとえば第二次安倍政権が発足した12年12月26日の夜、首相執務室。皇居での認証式を終えた安倍に菅はこう話したという。

「総理、この内閣がつまずくとしたら歴史認識ですよ」

それに対し安倍は、「私もそう思います」と肯く。さらに初閣議で閣僚たちを前にした菅は、「歴史認識については内閣で統一する。進退に即かかわるから発言は慎重にするように」とクギを刺したという。安倍には決してできない芸当だろう。

それから一年経った13年12月26日、安倍は靖国神社を参拝した。既述したように靖国参拝について菅は当初言葉少なだったが、官邸詰めの記者らは誰しも「菅さんは反対した」と語ってやまない。朝日新聞特別編集委員・星浩は当時のことをこう明かす。

「(菅は)第二次安倍晋三政権の役割は『経済再生最優先』と繰り返し、安倍首相の靖国神社参拝にも『政権の最大の仕事は経済の再生。靖国参拝は経済再生のメドがついてからでも遅くはない』と主張して、反対した。それでも安倍首相が参拝に踏み切ると、対外的に不満を口にすることはなかった」(『官房長官 側近の政治学』)

靖国参拝は安倍の念願だった。安倍が菅を内閣の要の存在としていかに頼りにしているかがうかがえる局面だったように思う。

(続きは『影の権力者 内閣官房長官菅義偉』をお読みください)