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世界を目指す”平成のトキワ荘”誕生秘話~なぜ「鉄のまち」にマンガ家集団が?

北九州市発!おもしろベンチャー最前線②

提供:北九州市 産業経済局産業政策課
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http://www.city.kitakyushu.lg.jp

株式会社コルトの大野光司代表

第1回「まさかの大ヒット!『プリン専用醤油』はこうして生まれた」はこちら

明日のマンガ家たちが集う“平成のトキワ荘”

福岡県北九州市。JR小倉駅にほど近い雑居ビル。その4階のワンフロアにコワーキングスペース「コルト」が開業したのは、2015年7月のこと。エレベーターを降りると昭和の人気マンガ「鉄人28号」の巨大立体モデルが出迎えてくれる。

広々とした打ち合わせスペースの周囲にもマンガ関連のコレクション。その奥には18人分の作業スペースが配置され、イラストレーターやマンガ家が、熱心に創作活動をしている。各ブースとの間を仕切るパーテーションが低いため、お互いの様子が微妙に感じとれる設計だ。

「トキワ荘は手塚治虫という圧倒的な才能に憧れて多くのまんが家が集まり、藤子不二雄など多くのスターが登場した。それと同じように多くの才能がここに集まることで相乗効果が働けば、将来の人気作家が生まれる可能性がある。目指すは“平成のトキワ荘”です」

株式会社コルトの大野光司代表は設立の意義をこう語る。

「マンガに専念できる時間が増えた」

コワーキングスペースは、複数の独立した個人がオフィス環境を共有し、アイデアや情報を交換することで生まれる相乗効果を目指すコミュニティ・スペース。近年、北九州市内には人口減少から空室になった建物の再利用やリノベーションとして、同種の施設が複数誕生しているが、コルトにはほかにない特徴がある。

一つは、入居者をマンガ家やイラストレーター、映像作家などポップカルチャー系のクリエーターに限っていること。現在、10人の作家が入居中だが、そのなかには海外でも活躍するイラストレーターのしいたけさんなども含まれている。特別な募集はしていないが問い合わせも多く、近くマンガ家志望の女性も加わる予定だという。

「マンガ家は特にそうですが、家族を含めて周囲の理解が得にくく、孤独な人が多い。ところが、ここにくれば同じような夢を持ち努力している人が大勢いるため、疎外感がなくなるし、なにより前向きになれるようです」(大野代表)

パーテーションで仕切られたブースが並ぶコルトの室内。


入居者の四元優志さんもマンガ家としてのデビューを目指す一人。美少女キャラが得意で、友人の紹介で参加した。

四元優志さん

「アーティストが同じスペースにいることで刺激になるし、人脈も広がりました。以前はアルバイトで生計を立ててきましたが、ここで仕事を紹介してもらえるようになったことで、マンガに専念できる時間が増えた。なにより作品を発表する場ができたのがうれしいですね」(四元さん)

二番目の特徴は、四元さんも言っていたように、運営するコルトが営業して、集まった作家のために仕事の依頼を集めてくることだ。

「北九州には才能があるのにうまく仕事を見つけられないクリエーターが大勢います。一方で、仕事を発注したいが、どこに依頼すればいいかわからず困っているクライアントもいる。両者を結びつけることで、きちんと収入が確保できる環境ができれば、創作活動に専念でき、より才能が開花するチャンスが増えると考えています」(大野代表)

開業から1年にもならないが、すでに多くの成果が出ている。市内の食品会社のマスコットキャラクターづくりやそれを使ったPR映像の製作。無料通信アプリ「LINE」用のスタンプの製作依頼も多く、すでに10以上のスタンプが採用されている。

「現在もある地方自治体からの依頼で歴史の壁画づくりを進めています。太古の歴史は画像の資料がないため、それを伝えるにはマンガという表現は最適。規模が大きな案件のため個人では荷が重いが、複数のクリエーターが協力すれば完成させられる。コルトのもっとも得意とする仕事といえるでしょう」(大野代表)

北九州をポップカルチャーの聖地に

代表の大野さんは現在55歳。もともとは市内にあるデザインやイベントの製作会社に勤め、営業とプロデュースを担当してきた。熱烈なおもちゃコレクターとしても知られ、当初はおもちゃを生かして昭和レトロで起業できないかと思っていた。一方で、北九州には才能があるマンガ家がいることは前職時代から感じていた。

そんなとき、偶然、現在の会社のあるビルを知人から紹介され、コワーキングスペースの発想と結びついたという。  

地元の才能を育て、まちを活性化したいと願う大野代表の試みには地元北九州市の「スタートアップネットワークの会」も、さまざまなバックアップをしている。

北九州市では現在、“日本一起業しやすい街”を目指し、「拠点、投資、融資」の三本柱からなるさまざまな起業支援活動を行っている。さらに、この三本の柱を結びつける円滑なスタートアップを支えているのが、「スタートアップネットワークの会」である。

この「スタートアップネットワークの会」は2015年4月に設立された。会員数は、設立から1年未満にもかかわらず、企業、個人あわせて300人を超えている。入会は、起業を目指す人、起業した人、さらに起業を応援したい人まで誰でもOKで、入会に特別な資格は必要としない。月に1度開かれる交流会「スタートアップラウンジ」では北九州市内でベンチャー企業を立ち上げた経営者をはじめ有名経営者がゲストとして招かれ、参加者を交えた常にトークが交わされている。

こうした会の活動は、北九州市内外に起業家マインドを拡散させると同時並行的に、北九州市の施策と連携したさまざまな活動を繰り広げている。地元をポップカルチャーの聖地にしようという試みも、市と連携した取り組みの一つだ。

「北九州市では、ジャンルを問わず、新たな価値を創造しようとする人たちを応援したいと考えています」と話す安永さん。

「行政がポップカルチャーを産業としてサポートすること自体、全国的にも珍しい取り組みだと思います。これまでの起業支援といえば、製造業など実業が中心でしたが、これからはコンテンツビジネスも大きな柱になる。大野さんのコルトを通して地域に眠る人材リソースを掘り起こすことができれば、経済的効果に加えて市の知名度も上がる。そうした相乗効果を期待しています」(北九州市産業経済局戦略推進担当  安永真一郎さん)

北九州市といえば、旧八幡製鉄に代表される北九州工業地帯のイメージが強いだけに、同市でポップカルチャーと聞いても、一瞬結びつかないかもしれない。だが、実は両者には密接な関係がある。古くは新聞マンガ出身でその後人気漫画家になった関谷ひさしさんや、『宇宙戦艦ヤマト』の松本零士さんは北九州育ちで、JR小倉駅にはメーテルの像もある。そのほか、北条司さん、陸奥A子さん、山田恵子さんは北九州出身だ。また、近年も小倉の西日本総合展示場でコスプレイベント、同人誌即売会が開催されるなど、ポップカルチャーを好む人たちの間ではかなりの知名度がある。

そこに市が注目して、アニメ・マンガをはじめ、周辺のジャンルも取り込んでポップカルチャーによる賑わいづくりを目指そうという取り組みを、2年前から始めたのだ。

次々生まれる相乗効果

また、北九州市では「スタートアップネットワークの会」などを通じた人的交流の場を提供することに加えて、資金的な面でのサポートにも力を入れている。

「スタートアップネットワークの会」にも7つの金融機関が参加しているが、こうした例は全国的にも極めて希だ。さらに日本政策金融公庫と連携、クリエイティブ産業や情報通信サービス事業の起業を目的に「北九州市スタートアップ支援貸付」という独自の試みも始めている。市が保証人になることはできないが、会の認定が受けられれば、公庫との交渉に同席するため融資が受けやすくなる傾向はあるようだ。これまでに9件の実績があるが、融資交渉の成功率は10割だという。このうち4社は20代、30代の若い起業家だが、無担保で最大2000万円という融資を受けている。これも、市がさまざまな形でバックアップしている結果といえるだろう。

このほか、つねに門戸を開き、さまざまな相談者に対し、情報の提供や必要なノウハウをもつ人材や企業の紹介も積極的に進めている。

コルトが先頃手掛けた地元のITベンチャー企業、株式会社レセプターの販促映像製作も、「スタートアップネットワークの会」が仲立ちしたものだ。レセプターは既存のポイントカード端末に別のポイント制度をのせる技術を開発した。これは企業にも顧客にもメリットが大きい仕組みだが、言葉では説明しにくい。そのためなかなか営業に結びつかず悩んでいた。経営的にも厳しい状態にあったのだが、「スタートアップネットワークの会」に参加し、「北九州市スタートアップ支援貸付」を活用して資金面での安定を図ることができた。これは、両社をよく知る「スタートアップネットワークの会」だからこそ、結びつけが実現した。

「コルトは表現の技術があるが、IT系の技術は十分ではないので、両社がタッグを組めばお互いの長所が生かせると考えました。コルトがつくった販促映像でレセプターのビジネスが成長すれば、それがコルトの実績としても残り、次の仕事の受注につながることを期待しています。」(安永さん)

「我々はマンガビジュアルを中心とした製作物を受注するBtoBビジネス企業」と語る大野代表。

単に一方で他方を助けるだけではなく、結びつくことで、ともに成長できる。それこそ「スタートアップネットワークの会」の目指す相乗効果といえるだろう。

設立から約半年。地元での認知が高まりつつあるコルト。舞い込む案件も増えているが、一方で集まる作家自身の作品のプロモーションにも力を入れたいと、大野代表は考えている。

「雑誌で活躍する人気マンガ家が出てくれればうれしいのですが、むしろ日本ではなく海外で活躍することを目指してほしいと思っています。画は、言葉はいらないし、台詞が入っても翻訳は簡単。円ではなく外貨を稼げるマンガ家が出てくれれば最高ですね」(大野代表)

すでに小さな芽は出始めている。コルトに仕事場をもつイラストレーターのしいたけさんの作品はアジアを中心に海外で売れている。フランスのジャパンエキスポは有名だが、香港や台湾でも日本のマンガやオタク文化を紹介するイベントがあり、それぞれ何十万人も集まる。こうしたイベントにマンガ家は個人の力で出展しているが、将来的にはコルトが窓口になってコーディネートすることも計画中だ。

こうしたコルトの夢は、同時に北九州市が目指すビジョンでもある。

「マンガ家をはじめ、これまではクリエイティブな仕事の世界では東京に目が向きがちでしたが、これからはアジアを中心に海外で仕事をすることも普通になると考えています。それなら北九州にいることがハンデではありません。それどころか中国などアジアとの距離なら東京よりも北九州市の方が近いくらいですから、これを生かさない手はないと思っています」(安永さん)

北九州市が鉄のまちからポップカルチャーの町に生まれ変われるか。挑戦は始まったばかりだ。

提供:北九州市 産業経済局産業政策課
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