バルスの髙島さんはもともとは家具メーカーに勤務していた。あるとき、「家具業界は消費者の意見が反映されておらず、プロダクトアウト(企業が商品開発・生産・販売活動を行ううえで、売り手の都合を優先するやり方)になっているのではないか」と疑問に感じるようになり、そこで、顧客のニーズに即したビジネスをしたいと考え、バルスを起業し、フランフランをオープンした。鈴木氏はその考え方に共感したという。
わたしが髙島さんのお話のなかで、もうひとつ共感したのは、従来の家具店とはまったく違った発想を大事にするため、「同業他社にはまったく目を向けなかった」ということでした。
髙島さんは、同業が何をしているかなど、まったく考えず、会社を設立してから十数年間、外部の同業の人とはほとんど会うこともなかったといいます。
自分たちの土俵をしっかりつくらないと、他社と激しい競争をしなければならない。まず、自分たちの土俵をつくることに専念して、独自の世界を探求し続ける。そして、自分たちをお客様がどう評価してくださるか、それだけを見てビジネスに取り組んだそうです。
横を見ているうちは、相手と同じ土俵で激しい競争をしなければなりませんが、「自分たちの土俵」ができれば、いたずらに競争に巻き込まれることなく、自分の頭で考えた独自性を打ち出すことができます。
(明日公開の後編に続く)
著者: 鈴木敏文、勝見 明
『働く力を君に』
(講談社、税込み1,404円)
日本最強、グループ総売上高10兆円の巨大流通企業を率いる鈴木敏文氏が、自ら、ずっと変わらず実践してきた仕事術を、いまビジネスパーソンにすべて伝える!