二匹目のドジョウを追うな!
〜セブン&アイCEO鈴木敏文が明かす「必勝のビジネス哲学」

鈴木 敏文

わたしたちは、ヒットしているAという商品を見ると、つい、Aの延長上にあるAダッシュのような商品を考えてしまいがちです。しかし、売り手からはAとAダッシュは違うように見えても、お客様から見れば、同じAなのです。Aではなく、BやCを考えなければならない。

セブンプレミアムももし、他のPB商品と同様に低価格路線を選択していたら、何匹目かのどじょうになり、いまのような評価は得られなかったのは間違いないでしょう。

柳の下のどじょうをねらうのは、要するに、「ものまね」をするということです。ものまねは絶対、本物以上にはなれないし、トップをとることもできない。ものまねをしているかぎり、成功はありえません。

新しい発想のほうがものまねより楽

流通業界では一般的に、同業他社の他店見学が「マーケットリサーチ」と称して行われるが、鈴木氏は社員たちに他店見学を禁止したことがあった。その理由をこう話す。

なぜ、他店見学を禁止したのか。人間はたいてい、よい例を見ると、そのよさを取り入れようとする心理がどうしても働いてしまうからです。

単に「ものまねはするな」といっても、社員にはなかなか具体的な実感として伝わりません。そこであえて、「他店を見てはならない」という厳しいいい方をして徹底させた。それほどまでに、人間は無意識のうちにも、ものまねに傾いてしまうのです。

ものまねをするのとしないのとでは、どちらが本当は楽なのでしょうか。

ものまねをするほうが一見、楽なように見えます。しかし、まねする相手が右に行けば右、左に行けば左に進む。一度ものまねをすると、絶えず相手の動きが気になって進む道が制約され、やがて同質の競争に巻き込まれます。

本当の競争力は自己差別化から生まれます。ものまねをせず、自己差別化をしていくには、新しいことに挑戦し、自分の頭で考え、答えを出していくことが求められるので、大変そうに思えます。

しかし、ものまねと違って、あらゆる方向に広い角度で自由な発想で考えることができる。そのほうがむしろ楽であるという発想に切り替えることが必要なのです。