鶴翼の陣はまぼろしだった!? 戦国軍事史の意外な「新事実」

乃至 政彦 プロフィール

意外などんでん返し

ふたりはほとんど詐欺師のようにして、諸葛孔明に由来するとされる八陣の軍法を独自の解釈で実用化してしまう。そして上杉謙信との戦いにあたり、意外な展開を迎えるのである。

のちにそれは大坂の陣において、真田信繁(幸村)と伊達政宗によって重大な起点を招き、徳川幕府の軍制基準を高度に明確化させるにいたっている。

一年ほど前、これをひとつの論文として、学術誌に投稿する準備をしていた。だが、論文は研究者の目に入りやすいものの、クリエイターの目にはつきにくい。

そこに思い悩んでいたところ、講談社から一冊の新書としてまとめる話をいただいた。これはありがたかった。おかげで論文は査読を通り、『武田氏研究』五三号に掲載されて、新書もほぼ同時期に脱稿し、『戦国の陣形』の書題で上梓するにいたった。したがって本書の鮮度は高いはずである。

歴史好きでなくとも、まずは本書を面白がって欲しいと思う。そして「意外などんでん返し」のドラマは探偵小説ばかりでなく、現実にも満ち溢れていることを体感してもらいたい。

あなたがこれまで見聞きした歴史の情報や体験を、すべて歴史ミステリーの伏線として回収し、披露してみせ、空白地から天魔を放逐するのが、わたしの仕事である。

読書人の雑誌「本」2016年2月号より

乃至政彦(ないし・まさひこ) 1974年香川県生まれ、神奈川県在住。戦国史研究家。越後長尾氏と公儀、中世の陣立、武家の精神と性愛など、未開拓の研究領域に切り込む。著書に『戦国武将と男色』『上杉謙信の夢と野望』、共著書に『関東戦国史と御館の乱』(いずれも洋泉社)がある。テレビの歴史番組にも出演。

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