これが「がん治療」の切り札だ!〜免疫のスゴすぎる働き、研究最前線

ノーベル賞・本庶佑氏の「PD-1」も
岸本忠三, 中嶋彰

ところが、がんの悪知恵もすごい。がん細胞は、キラーT細胞の攻撃を受けると自分の体の表面にチェックポイント分子と結合する分子を出現させ、キラーT細胞の攻撃をストップさせてしまうのだ。

狡猾ながんの戦術に気づいた免疫研究者や医師の関心は、免疫チェックポイント分子へと向かった。がんがそこまでやるのなら、我々はブレーキを悪用されないようにボタンをブロックする抗体医薬をつくろう。そうすれば、免疫細胞はノンストップでがんと戦ってくれる――という作戦である。

いま、最も注目を集めている免疫チェックポイント分子は、日本の本庶佑が京大の教授時代に偶然、発見したPD-1という分子だ。そして、PD-1に注目してがん治療のための抗体医薬を開発したのもまた、日本の製薬企業だった。

がんとの戦い比べると派手さはないかもしれないが、現代免疫学は、原因が不明で治療が難しかった難病にも堅実に迫りつつある。免疫細胞の過度な攻撃によって起きる自己免疫疾患性の難病も、次第に抗体医薬によって症状を改善できるようになってきたのだ。

これから語るのは、日本の研究者たちの不断の努力と活躍を縦糸に、最新の成果を横糸に織り込んで紡ぎ出した、現代免疫学の物語。読者ははるかな過去から私たちの生命と健康を守りつづけてきた免疫がいま、がんや難病の制圧に挑み、かつてない成果をあげはじめたことに息を呑まれるだろう。

 
著者 岸本忠三(きしもと・ただみつ)  大阪大学特任教授。大阪大学医学部卒。阪大医学部長、阪大学長、総合科学技術会議議員を歴任。米国立科学アカデミー外国人会員、日本学士院会員。日本学士院賞・恩賜賞受賞、文化勲章受章。二〇〇九年クラフォード賞受賞。著書に『現代免疫物語』『新・現代免疫物語』(講談社ブルーバックス)など。一九三九年大阪府富田林市生まれ。
著者 中嶋 彰(なかしま・あきら)サイエンス作家。東京大学工学部卒。日本経済新聞社入社、科学技術部次長、科学技術担当編集委員を歴任。著書に『「青色」に挑んだ男たち』(日本経済新聞出版社)、『現代免疫物語』『新・現代免疫物語』(講談社ブルーバックス)など。一九五四年兵庫県宍粟市生まれ。
免役が挑むがんと難病 現代免疫物語beyond』

岸本忠三・中嶋彰=著

発行年月日: 2016/01/20
ページ数: 320
シリーズ通巻番号: B1955

定価:本体  1080円(税別)
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(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)