ザッカーバーグはこれを読んで「未来」を見通している?

全米で話題のベストセラー『権力の終焉』
池田 純一 プロフィール

ただしナイムは国際政治分析家らしく、権力が衰退しているのは決してITだけによるからではなく、IT登場以前から存在した20世紀後半の社会潮流に起因すると考える(このあたりの長期思考は前回のリフキンの発想と通底している)。

権力の衰退をもたらす三つのM

彼によれば、権力の衰退理由は三つのM、すなわちMore、Mobility、Mentalityからなる。彼はこれら三つの動きをいずれも「革命=Revolution」と呼んでいる。それぞれについて簡単に紹介してみよう。

まず、主に「物質的豊かさの向上」を意味するMoreについては、21世紀に入り貧困は国際的には減少傾向にあるという(特にアフリカ全土での豊かさの向上が顕著であるらしい)。その傾向の下で、世界規模での中間層(=グローバル中間層)が台頭しつつあり、しかもその多くは若い世代である。彼らは挑戦者として既存の体制に素直には従わなくなる。

次にMobility=「移動」についてだが、20世紀後半から、ある権力圏域(通常は国家)から別の権力圏域へ移動する人びとが徐々に増加しており、その結果、特定の領域における権力の実効性が低下しつつあるという。

そこからたとえば、移民ないし一時滞在労働者からの国境を越えた送金が、送金先の国にとって無視できない規模に至るという事態も生じる。この点で、今流行りの「フィンテック(Fin-Tech)」の多くが、銀行業務の根幹である「送金」まで対象にしていることも理解できる。安価で安全な送金サービスこそが「移動する人びと」にとっては不可欠の装備であるからだ。

さらにMobilityの変化のもたらす変化には、世界的な都市化の進展がある。人口1000万人を越えるメガシティが登場し、グローバル中間層の拠点になるという。

最後にMentality=「意識」についてだが、これはMoreやMobilityの変容に伴う人びとの考え方の変化のことだ。その中には、たとえば女性の社会参画に伴う、主には夫婦・家族関係に対する基本的価値観の変容も含まれている。

以上の三つのMをナイムは、権力の衰退をもたらす変化要因として取り上げている。ちなみにこのようなナイムの時代分析を与件として受け止めて考案された未来構想の一つがアル・ゴアの『アル・ゴア 未来を語る』である。