気鋭の憲法学者・木村草太が説く「安保法制にこれから歯止めをかける方法」

木村 草太 プロフィール

(3)活動中の監視・事後的検証の不足

外国の武力行使への後方支援については、活動中の監視・事後的検証の不十分さが指摘できる。

今回の法整備にあたっては、事前の国会承認について注目が集まり、自民・公明の与党協議でもその範囲が焦点となった。しかし、事前の承認があれば、自衛隊の活動に国会のコントロールが及ばないというのではとても危険だ。

例えば、名古屋高判平成20年4月17日判時2056号74頁は、イラク特措法に基づく後方支援について、「航空自衛隊の空輸活動のうち,少なくとも多国籍軍の武装兵員をバグダッドへ空輸するものについては」「他国による武力行使と一体化した行動であって,自らも武力の行使を行ったと評価を受けざるを得ない行動である」と指摘している。

法律で武力行使一体化を禁じても、現場でその一線を超える可能性はある。活動中にも、政府・自衛隊の外部からのコントロールを及ぼす必要があるだろう。

また、イラク戦争について、外務省は、「イラクの大量破壊兵器が確認できなかったとの事実については,我が国としても厳粛に受け止める必要がある」との報告をまとめた(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/iraq/pdfs/houkoku_201212.pdf)。しかし、この報告書は極めて簡素であり、誰にどのような責任があるのか、あまりにも漠然としている。本来であれば、政府の外からの詳細な検証をすべきだろう。

今回の法制では、活動中・活動後に、政府・自衛隊の外部から活動を評価・検証する枠組みが十分に整えられていない。この点については、自衛隊の民主的なコントロールという観点から、制度設計を見直すことが不可欠だ。

(4)弾薬提供・発進準備中の機体への給油・整備

また、後方支援のメニューとして、弾薬提供・発進準備中の機体への給油・整備が解禁された点も問題だ。

安保法制の国会審議の中で、大森政輔元内閣法制局長官は、従来の政府内部では、これらの活動はいずれも外国軍の武力行使との「典型的な一体化事例」であり、違憲な活動だと認識されていた、と指摘している(参議院安保特別委員会平成27年9月8日)。

後方支援の活動地域が、「非戦闘地域」と言えなくても、「現に戦闘が行われていない場所」に拡大されたこととあわせて考えれば、こうした活動についての違憲の疑義はより強まることになろう。

この問題は、福山哲郎参議院議員が指摘したように、逆の立場から考えると、より問題が明白になる。

仮に、現政府の言うとおり、弾薬提供・発進準備中の機体への給油・整備が武力行使ではなく、後方支援であるとしよう。その場合、日本を攻撃するA国に、弾薬を提供したり、発進準備中の機体への給油・整備をしたりしているB国があっても、日本はB国に対して個別的自衛権を行使できない、攻撃できないということになる。これは、日本の個別的自衛権の範囲を不当に狭めているのではないだろうか。

ちなみに、この点を指摘した福山議員の質問に対し、安倍首相は、「まさにA国は日本に対して攻撃をしているわけでありますが、B国は日本に対して武力攻撃をしているというわけではない中において、このB国が行っていることがA国と完全に、その武力攻撃、武力行使の一体化が行われているという認識にならなければ、それは我々は攻撃できないということになるわけであります」と答弁している(参議院安保特別委員会平成27年9月11日)。

これでは、日本の安全を維持するために有効な自衛権の行使ができるのか、甚だ心許ないように思われる。