為末大が問う「東京五輪っていったい何のためにやるんですか?」

メダル獲得より大事なスポーツの価値とは
佐藤 慶一 プロフィール

メダルの獲得より医療費の抑制を

これからの少子高齢化の時代、いうまでもなくヘルスケアが重要になります。だからこそ、社会全体で健康になれるように、週に1回だけ一駅歩いてみるとか自転車で走りやすい道をつくるとか、そういう部分を促進できるような活動・事業をおこなっていきたいです。

いまや健康や運動に関する有益な情報はたくさんありますが、みんなが唯一できていないのは実行・継続することです。正しい情報がわかったとしても、それぞれの病気の予備軍の人にどうやって運動などしてもらうのか。タバコを吸う人もいれば、お酒を飲む人がいてもいいけれど、少しだけ運動もするような仕組みをつくることができないかと考えています。

だからこそ、日本陸上競技連盟や全国の陸上競技協会などスポーツに関する組織・団体はチャンピオンを生み出すよりも、健康と余暇の領域でバリューを発揮すべきだと思います。

特に30~80歳くらいの人たちが、スポーツをはじめやすい環境をつくることが大事です。なぜなら、日本の課題はどう考えても、メダルの獲得よりも、医療費の抑制だからです。そこに対して、責任を取る協会が出てくると未来が少し明るくなると思います。

東京五輪の招致に成功したからよかったけれど、仮に来なかったとしたら何をしなければいけなかったのか――。そのことを考えるべきです。2020年に祭典があっても、たった一瞬の気分が変わるだけで、本質的な解決は果たせないでしょう。五輪が来なかったときの気分や時代を想像しつつ、特に興味のある高齢化にアプローチしていけたらと思います。

為末大(ためすえ・だい)
1978年広島県生まれ。陸上トラック種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2016年1月現在)。2001年エドモントン世界選手権および2005年ヘルシンキ世界選手権において、男子400メートルハードルで銅メダル。シドニー、アテネ、北京と3度のオリンピックに出場。2012年、25年間の現役生活から引退。現在は、一般社団法人アスリートソサエティ(2010年設立)、為末大学(2012年開講)、Xiborg(2014年設立)などを通じ、スポーツ、社会、教育、研究に関する活動を幅広く行っている。 http://tamesue.jp/

『為末大の未来対談―僕たちの可能性ととりあえずの限界の話をしよう』
著者: 為末大(プレジデント社、1,728円)
スポーツ、教育、ビジネスの世界で活躍中の元プロアスリート/陸上メダリストの為末大がこれから10年後の近未来を見据え、「社会が科学や技術の進歩によってどのように変わっていくのか」という問いを、ノーベル賞受賞者から若き起業家まで、10の先駆者たちに投げかけた。人工知能、ロボット、ゲノム解析、ビッグデータ、自動運転など、研究と実用化の最先端から、人間の新たな課題と可能性を探る。

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