ラグビー「ブライトンの奇跡」〜エディ・ジャパンの通訳とメンタルコーチが明かす歴史的偉業の舞台裏

荒木香織×佐藤秀典×野中敬義
週刊現代 プロフィール

佐藤 エディさんは、さっきまでの怒りが嘘のように、手放しで喜んでいました(笑)。「アンビリーバボー。夢みたいだ」と。ずっと「南アフリカに勝つ」と言い続けてきたのですが、選手がそれだけすごいことをやってくれたんですよね。

野中 本番3ヵ月前の6月に24日間にも及ぶ合宿を経て、7月にキャプテンのリーチ(マイケル)をはじめ南半球のスーパーラグビーに参戦していた主力選手たちも合流してからチームの雰囲気は一層、引き締まりました。僕はアメリカ、サモアから2勝できるとは思いましたが、正直、南アフリカに勝つとは考えられませんでした。

荒木 試合前日、実はエディさんに「準備は完璧ですか」と聞いたんです。そうしたら「一つ、二つ取りこぼしたところはある」というので、どこなのか聞いたんです。

野中 何だったのですか。

荒木 「バックスにすごく速い日本人選手がいない」って。そんな大事なところ、取りこぼしすぎでしょ、ってツッコミたくなった(笑)。育てようと思ってやれることはやってきたけど、期待通りのレベルまではいかなかったんでしょうね。それでもあの試合は「何が起こったのだろうか」と思うくらい、うまく導かれていった気がします。

野中 僕は南ア戦後、会社から電話がひっきりなしにくるようになりました。国際電話の通話の限度額が迫ったほどです。ラグビーだけで番組の半分も時間を割くなんて、今までなかったですから。