大阿闍梨が明かす、千日回峰行の苦しみ「爪はボロボロ、血尿は出る。ところがある日、不思議な感覚が芽生えてくるのです」

島地勝彦×塩沼亮潤 【第1回】
島地 勝彦 プロフィール

シマジ 23歳でお山を歩きはじめて、修了までは何年かかったんですか?

塩沼 お山を往復するのは連続122日までと決まっていますので、都合9年かかります。ですからわたしは19歳で金峯山寺に入りまして、いわゆる若者の青春時代もなく、そのままずーっと山のなかにいて、千日回峰行が終わったときには32歳になっていました。青春もなくただバーッと走り切ったとう感じでしょうか。

シマジ そしていまは故郷の仙台に戻られて、慈眼寺を開山して住職さんをやってらっしゃるんですよね。

塩沼 はい。それから、もうお寺は存在しませんが、吉野山の持明院の住職もやっています。

シマジ 存在しないというのは、つまり、明治時代初期の廃仏毀釈で壊されたんですか?

塩沼 そうなんです。吉野には塔頭もたくさんあったんですが、全部破壊されてしまいました。残念なことです。

ヒノ 修行中、山道を歩いている最中に、眠くて眠くて我慢できなくなったことはありますか?

塩沼 最初のころはしょっちゅうでしたね。よく歩きながら眠っていました。いつも提灯を持って夜道を歩いているんですが、あるとき突然、足首をガってつかまれたんですね。誰もいないはずなんですが、とにかくそういう感覚に襲われて足が自然に止ったんです。

「あれ、どうしたんだろう」と思って目を凝らしてみたら、まわりにはなにもない。もう30センチほど進んでいたら、その先は何十メートルの断崖絶壁になっていました。その瞬間、たぶん、仏さまがパッとわたしの体を持ち上げてくれたんだ思うんです。

一度そんな怖い思いをすると同じ失敗は二度と繰り返さなくなりまして、それからは歩いて眠ってしまうようなことはなくなりました。

シマジ 聞いているだけで鳥肌が立つ恐ろしい話ですね。

〈⇒第2回 大阿闍梨がみた地獄

 

塩沼亮潤 (しおぬま・りょうじゅん) 大峯千日回峰行大行満大阿闍梨 1968年、宮城県仙台市生まれ。東北高校卒業後、87年に奈良県吉野の金峯山寺で出家得度。91年、大峯百日回峰行満行。99年には金峯山寺1300年の歴史で2人目となる大峯千日回峰行満行。2000年、四無行満行。06年、八千枚大護摩供満行。現在は、故郷仙台市秋保に慈眼寺を開山し、住職を務める。おもな著書に、『人生生涯小僧のこころ』『人生の歩き方』『毎日が小さな修行』(以上、致知出版社)、『心を込めて生きる』『執らわれない心』(以上、PHP研究所)、『〈修験〉のこころ』(共著、春秋社)などがある。
島地勝彦 (しまじ・かつひこ) 1941年、東京都生まれ。青山学院大学卒業後、集英社に入社。『週刊プレイボーイ』『PLAYBOY』『Bart』の編集長を歴任した。現在は、コラムニスト兼バーマンとして活躍中。『甘い生活』『乗り移り人生相談』『知る悲しみ』(いずれも講談社)『バーカウンターは人生の勉強机である』(阪急コミュニケーションズ)『お洒落極道』(小学館)など著書多数。Webで「乗り移り人生相談」「Treatment & Grooming At Shimaji Salon」「Nespresso Break Time @Cafe de Shimaji」を連載中。最新刊『蘇生版 水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負』が好評発売中!

著者: 開高健、島地勝彦
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1989年に刊行され、後に文庫化もされた「ジョーク対談集」の復刻版。序文をサントリークォータリー元編集長・谷浩志氏が執筆、連載当時の秘話を初めて明かす。

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著者: 島地勝彦
お洒落極道
(小学館、税込み1,620円)
30代、40代の男性を中心に熱狂的ファンを抱える作家、島地勝彦氏の『MEN’S Precious』誌上での連載「お洒落極道」が、待望の書籍化!

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