大阿闍梨が明かす、千日回峰行の苦しみ「爪はボロボロ、血尿は出る。ところがある日、不思議な感覚が芽生えてくるのです」

島地勝彦×塩沼亮潤 【第1回】
島地 勝彦 プロフィール

塩沼 どうりでたくさんあるわけですね。そこの瓶のラベルは格好いいですね。ドクロのマークが入っていますけど。

立木 千日回峰行をやられた聖人がシマジの毒に興味を持ってはいけません。

シマジ 大阿闍梨はさすがに目ざといですね。わたしはドクロが大好きなんです。ラテン語で「メメント・モリ(死を忘れるな)」という言葉がありますが、ドクロをみているとこころが謙虚になるんですよ。ほら、こうしてドクロの指輪までつけています。

立木 ウソつけ。死ぬ前にもっと悪いことをしようという魂胆が顔に書いてあるじゃないか。

塩沼 ウイスキーで1つ思い出しました。わたしの母の友達の田尾幸子さんという方が横浜で「パリ」というバーをやっているんですが、大正12年創業の老舗でして、第2次世界大戦のときに地下に埋めて難を逃れたという古いロイヤルハウスホールドを少しだけなめさせてもらったことがあります。なんともいえない複雑な香りがして、それはそれは美味しかったです。

シマジ そうでしょうね。ん、ということは大阿闍梨はイケる口なんですね。一杯いかがですか?

塩沼 ありがとうございます。お酒の大好きな師匠の弟子ですので、お酒の味は好きなのですが、酔うのがきらいで、しかも今日はこれからテレビの収録が控えておりますので遠慮させていただきます。今度また、日を改めてお伺いします。

シマジ どうぞ、どうぞ、喜んで。東京へお越しの際はいつでもご連絡ください。お待ちしています。

ヒノ 吉野の山でいままでに千日回峰行をやり遂げたお坊さんは何人ぐらいいたんでしょうか?

塩沼 吉野の大峯千日回峰行は1300年の歴史がありますが、満了したのはわたしで2人目です。百日回峰行をなされた方はたくさんいらっしゃいますけど、千日となると、やはり体力が余程でないと勤まりません。

シマジ 体力も大事でしょうが精神力も並々ならぬものが必要なんでしょうね。

塩沼 たしかに精神力も必要です。食べるものは毎日おにぎりです。あとは1日1回の精進料理。タンパク質もカルシウムもほとんど摂取できないので、必ず栄養失調になり、1ヵ月ほどで触るだけで爪がボロボロと砕けてきます。3ヵ月が過ぎるころからは血尿が出てきます。

シマジ そういう過酷な状況で自分を痛めつけて、それでも明るい希望を持てというのは、本当に壮絶な修行ですね。

塩沼 そうなんです。そこでマイナスなことを考えると自分の成長がない。ただ苦しみに耐えて耐えて、その苦しい時期を過ぎると、そうですね、イメージでいいますと、土手っ腹でドンと受け止めて、両の足で一歩前へ進むと、自分が成長したような感覚が持てるんです。

千日回峰行をはじめたときはまだ23歳でしたから、若かったんでしょうね。「やるぞ」という情熱に燃えて山道を蹴るように歩いていましたが、だんだん日数が経つうちに、山道を愛撫するように優しく歩けるようになりました。