研究者は「研究以外」のビジネス感覚がないと一流になれない!

研究室という「組織」でうまく生き抜く
長谷川 修司
〔PHOTO〕gettyimages

教授から与えられた研究テーマが気に入らない学生はどうすべきか、それは、まさに会社の上司の方針が気に入らない場合、どう振る舞うか考える際のヒントになるはずです。

上司の前で上司の方針に反する持論をとうとうと展開しても何の説得力もありません。さあ、どうしたらいいのでしょうか?

プロジェクト研究を主宰する立場になると、自分の学生や若手研究者に、いわば「歯車」となって研究してもらう必要が出てきます。そのときに、一人一人の学生の成長をどう手助けしながらプロジェクト全体を成功に導くか、これはまさに企業の中である程度の立場になったら必ず考えることと同じはずです。

そのようなマネジメント力も独立研究者となったら不可欠の要素です。上から言われるままに受身的な「歯車」として働くのではなく、プロジェクト全体のなかでの自分のミッションの位置づけを認識し、そのなかで全体にベストフィットするための創意工夫をしながら能動的に回る「歯車」として働くことで個人的にも成長できると、学生や部下には納得してもらう必要があります。

このようなポジティブな意味での「歯車」としての経験は研究者として、あるいはビジネスマンとして若手を成長させる良いOJT(On-the-Job Training)になるはずです。

最近、ノーベル賞受賞者が続出していることもあり、また、STAP細胞事件が記憶に新しいこともあり、良い意味でも悪い意味でも研究者の人間的な側面が一般市民の目に触れる機会が増えました。

研究や技術開発では、クールな秀才が論理的に仕事を進めるものだと思われがちですが、テレビドラマからでも想像されるように、いろいろな葛藤や迷い、悩みが常につきまとう、極めて人間的な営みなのです。ですので、ほかの職業と同じように、「良き市民」として常識的な振る舞いが求められるのは当然なのです。

読書人の雑誌『本』2016年1月号より

はせがわ・しゅうじ/1960年栃木県に生まれる。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了。理学博士。日立製作所基礎研究所研究員、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻助手、同助教授、同准教授を経て、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授。専門は表面物理学、とくに固体表面およびナノスケール構造の物性

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研究者としてうまくやっていくには
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理系の若者にとって「研究者」は憧れの職業。先輩や教授といった他人とうまく付き合い、研究室という組織の力を活かすのが、この職業で成功するコツだ。本書は、「学生」「院生」「ポスドク」「グループリーダー」と段階を追いながら、それぞれのポジションでどう判断し、行動すべきか、実例を交えて案内する。

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