「テロに気をつけろ」と言われても、何を、どう気をつければいいの?

自分の身は自分で守るしかない
菅原 出

セキュリティ対策の基本は

よく海外に渡航する人に対して、「テロには十分気をつけてね」などと気休めの言葉をかけることがある。しかし、「何に、どう気をつけるのか」までアドバイスしてくれる人は少ない。

セキュリティ対策の基本は、確かに「気をつけること」である。では何に気をつけるのか。それはこれまで書いてきたような「脅威」に対してである。

「脅威」とは、「強い力や勢いで脅かすこと」「個人の心理的な安定や統合を脅かしたり、物理的な安全を脅かす人、物もしくは状態のこと」だと辞書に記されている。要するに自分たちに何らかの危害を与える存在や状態のことを指す。

ISのようなテロ組織が起こすテロリズムは、私たちが「気をつけなければならない」脅威の一つだ。ちなみに「リスク」とは、そうした脅威が被害を及ぼす可能性のことを指している。

では、「テロの脅威」に「どう」気をつけなければならないのか。これが対策にあたる。

その対策の第一は、自分たちに何らかの危害を与える可能性のある脅威が、いったいどんな連中なのか、どこでどんな活動をしているのかを「知ること」である。これまでISの戦略や能力、テロのインフラの分析をしてきたのは、全て「脅威分析」すなわち敵を知るための作業であった。

その上で、「自分たちの活動の中でどこが脆弱で、どんなリスクが想定されるのか」、すなわちリスク評価が必要になる。この時点でどんなことに気をつけなければならないかが分かるはずである。つまり、「何にどう気をつければいいのか」を、「脅威分析」→「リスク評価」の手順で割り出すのである。

リスクの割り出しができたら、それぞれのリスクにどのような対策があるのかを検討する。オフィスなどへの侵入盗対策には、フェンス、ゲート、アクセス・コントロール、監視カメラ、常駐警備の導入など、脅威に応じて機械警備システムや物理的な警備サービスが存在する。がんのリスクにはがん保険があるように、セキュリティ・リスクごとに各国のセキュリティ会社がセキュリティ・サービスを提供している。

しかし、重要なのはこうした物理的な警備、すなわちハードの部分よりもむしろ、ソフトの部分である。監視カメラはついていたとしても、それをコントロール・ルームでモニタリングしている担当者が居眠りをしていたら、システムは機能しない。

警備員が常駐していたとしても、教育や訓練も受けていなかったり、強盗団に友達でもいたら逆に脅威になってしまう。

防弾車両を導入したとしても、運転手が十分な訓練を受けていなかったり、運転が乱暴であれば、逆に交通事故のリスクを高めるのと同じだ。

海外の危険地域でセキュリティ対策を導入する際には、特にこうしたソフトの部分を重視し、業者に丸投げすることなく、常に細部の確認を怠らないことが大事である。