「テロに気をつけろ」と言われても、何を、どう気をつければいいの?

自分の身は自分で守るしかない
菅原 出

また脅威のタイプも、2013年1月にアルジェリアのイナメナス天然ガス施設で発生した人質テロ事件のような大規模テロを最悪事態として想定する必要がある。

このように実際の活動に応じて、想定される脅威は異なる。だから「エジプトは危ない」「サウジアラビアは危ない」と一概に言うことはできない。それぞれの国のどのエリアがどれくらい危険かを評価する必要があるのだ。

テロが「常態化」する世界で、海外に進出する企業、出張、赴任、留学や旅行で海外に渡航する個人は、どのように脅威から身を守ることができるのか。

一般的なやり方として、空港に到着した時点から帰国するまで自分たちの現地での行動を詳細にシミュレートし、どこに脆弱性があるかを検討する「脆弱性と評価」という手法がある。

空港から滞在先までの移動時にはどんな脅威があるのか。車両による強盗やカージャックなどが経路上で頻繁に起きているのかどうか。滞在先のエリアの状況はどうか。滞在するホテルの周辺には、歓楽街などがあるか。外国人を狙った強盗や誘拐事件などが起きているか。

ホテルのセキュリティ状況はどうか。アクセスをコントロールするシステムや常駐の警備員がいるか。滞在先から勤務先への移動はどうか。勤務先周辺エリアの状況やそのセキュリティ体制や脆弱性は?

ショッピング街や休日に過ごすかもしれないエリア、家族や子どもも連れていく際にはその学校についても、それぞれ周辺地域の脅威、施設自体のセキュリティ状況やリスクなどを詳細に分析・評価する必要がある。

このように、一つ一つ個々の活動や行動の潜在的な脅威やそれに対する脆弱性を検討していく。この際、実際に現地で発生している事件を参考にしながら、リスク・シナリオを考えていくといいだろう。移動時に想定されるリスクはこれとこれ、ホテル滞在中のリスクはこれ、という具合に、それぞれの行動に応じたリスク・シナリオをいくつも検討し、想定できるリスクを全てリストアップしていくのである。

例えば、都市部で「一匹狼型」のテロは発生していても、自分たちの活動する郊外の田舎は平穏でテロの脅威が存在しない場合もあり得る。その場合は、都市部で活動する場合のみ、「一匹狼型」のテロに巻き込まれることを「想定されるリスク」に含める。郊外の田舎でしか活動しないのであれば、テロ・リスクはそれほど注意しなくてもよいということになる。

自分たちの活動する範囲や内容と、そこで過去に発生した事案の性質を分析することで、可能な限り想定されるリスクをリストアップすることができるはずだ。この作業を「リスク評価」と呼ぶ。

通常は現地を視察してヒアリングなどをしていけば、だいたいリスクの絞り込みができていくものだが、より精緻にリスク評価を行うのであれば、リストアップしたそれぞれのリスクについてレーティングを付けて比較する方法が一般的だ。

先のラゴスの例を使うと、リスクの一つは「強盗」で、リスクの内容は「武装した強盗に遭って金品を盗られる。対応を誤った場合発砲され、最悪の場合殺害されることもある」というものだ。このリスクの「発生可能性」を仮に5段階中の4で、「発生した際のインパクト」を5段階中の3とすると、このリスクのレーティングは「4×3=12」となる。

一方、「公共施設でのテロへの巻き込まれ」のリスクについては、「発生可能性」は2と低いが、「発生した際のインパクト」は最高の5だと評価できれば、リスク・レーティングは「2×5=10」となる。

リスク・スコアが「0~1」の範囲ならば「深刻なリスクではなく対策は不要」、「2~4」ならば「低リスクであり、対策は不可欠ではない」程度の評価となろう。「5~10」は「中リスクで、対策を検討すべき」になり、「11以上」のスコアの場合「高リスクであり、対策を要導入」という評価になるだろう。

ラゴスの例で言えば、「強盗」のリスクに対する優先順位が高く「対策を要導入」で、「公共施設でのテロへの巻き込まれ」については「中リスクであり対策を検討すべき」課題と位置づけられる。

このように一つ一つ想定されるリスクを分析・評価することで、どのリスクから対策を検討しなくてはならないのか、優先順位をつけることができる。この脅威分析とリスク評価を、時間をかけて綿密に行い、「自分たちの活動に対する脅威やリスクは何なのか」をしっかりと認識することが何よりも重要である。