「テロに気をつけろ」と言われても、何を、どう気をつければいいの?

自分の身は自分で守るしかない
菅原 出

通常「一匹狼」が個人で狙える場所は限定されており、その脅威のレベルは決して高くない。不特定多数が集まり、しかも警備が手薄なところ─駅、空港、ホテルのロビーやショッピングモール、カフェ、政治的・宗教的なイベントなどが「一匹狼型」のテロの主要なターゲットになる。

テロの「インフラ」を分析せよ

このように国や地域によって、ISの戦略や能力、脅威のレベルは異なっている。これはISが活動する上での「下部構造(インフラ)」がどの程度存在するかによって自然と決まってくる。

「直轄領」地域では、抑圧され不満を溜めたスンニ派住民が多数居住しており、もともとISに対する支持者が多い場所である。このような地域では政府の監視が行き届いていないため、メンバーのリクルートも容易で、様々な不法活動、例えば爆弾を製造する工場を運営したり、テロリストを訓練するキャンプを設営することができる。

さらに隣の国と国境を接していて、隣国からヒト・モノ・カネを取り引きできるような環境にあれば、さらに活動はしやすくなる。イラク西部のアンバール県がこの条件を全て満たしている。

このようにテロ組織が活動をするためのインフラがどの程度存在するかを分析することで、テロ能力や脅威のレベルを判定することができる。

ISがフランチャイズ化を進めている国であっても、その国内全てに均等にISの脅威が存在するわけではない。例えば、ある地域ではIS支部の支持者が多く政府の管理が行き届いておらず、テロの「インフラ」が整っているが、同じ国の別の都市では政府の影響力が強くISメンバーは組織的な攻撃がとれないため、「一匹狼型」のテロしかできない、という場合もある。

リスクをどう見積もるか

活動をする場所によってテロの「インフラ」が異なるので脅威レベルが変わることを説明したが、場所だけでなく、活動の内容によっても脅威は変わってくる。

ナイジェリアという西アフリカの国を例にとってみる。

ナイジェリアは非常に治安が悪く、ボコ・ハラムのテロ、強盗や殺人、誘拐などの凶悪犯罪、侵入盗や路上での強盗や詐欺などの一般犯罪まで様々な脅威が存在する。

しかし、大都市ラゴスのビジネス街に滞在し、24時間体制の警備の行き届いたホテルに宿泊し、少人数でオフィスに勤務をする場合と、南部の地方空港から一時間以上車で走らないといけないような田舎のプラント施設内のキャンプで生活するのでは、自ずと脅威のタイプが異なってくる。

前者の場合は、強盗などの一般犯罪や裕福なビジネスマンを狙った誘拐などに気をつける必要があり、2013年9月にケニアのナイロビにある大型商業施設ウェストゲートで発生した武装襲撃のようなタイプの都市型テロへ巻き込まれることに注意する必要がある。また、少人数ならば目立たず機動的に行動し、緊急事態発生時も迅速に国外退避ができる。

一方、郊外のプラントなどは、通常は国家の重要な拠点の一つであり、国家の収入を生み出す戦略的価値のある存在として知られている。そのような場所で例えば数十名、数百名単位で働く企業は、現地では否応なしに目立ってしまう。都市部ではないため、プラントから空港へのアクセスも通常は簡単ではない。何かが起きたら迅速に国外退避とはいかないだろう。