日本でも必ず起こる
テロに遭遇! その瞬間、どう行動するのが「正解」か

何が生死を分けるのか
菅原 出

結城さんは、続けて次のように書いている。

皆走りだしました。しかし、入ろうとした部屋で発砲され、人が血を流して倒れるのが見えました。前の人々が立ち止まったので、私はうしろへ倒れました。その時、後方から銃声がし、耳に痛みを感じました。部屋の入り口を振り向くと、男が銃を持って立っていました。顔は見ていません。すぐに頭を手でおおって床にふせました。(中略)しばらくして男が去り、起き上がると部屋には約10名の人々が倒れていました。無傷の人々もいましたが、動かない人もいました

この手記で分かるのは、結城さんたちがおそらくは犯人と10メートル以内の至近距離にいた、ということである。咄嗟に床に伏せて頭を手で覆ったのは、結城さんが自衛官だったからだろうか。適切な対応だった。これだけ至近距離で発砲されたら、とにかくその場で伏せるしかない。立っている者、動いている者は全て標的になったはずである。

結城さんの手記は、この部屋での乱射により10人くらいの方が殺害されたことを示唆している。今回のテロの被害者(死者)は合計で21名だ。全体の死亡者の半数近くがこの部屋での乱射の犠牲になっていたことになる。

犯行に使われたカラシニコフは、数百メートル先の標的でも撃つことができるが、この種の乱射事件で被害に遭い死亡するのは、過去のテロ事件を見ても、ほとんどが犯人の近くにいた人に限定されている。

これはつまり、とにかく早期に異常に気づき、「脅威の源泉=犯人」から離れれば離れるほど、助かる確率は高まることを意味している。

しかも犯人は自爆ベストを身につけていた。起爆させる前に警察に射殺されたため爆弾による被害者はいなかったが、もし彼らが起爆させることに成功していれば、至近距離にいた人は皆亡くなっていただろう。

もう一人の証言も紹介しよう。これはベルギー人の男性だ。この方も「犯人の一人は私の前にいた女性の頭に銃を突きつけると、躊躇なく撃った。即死だった」と証言していることから、大変な至近距離にいたことが分かる。

このベルギー人は慌ててバルコニーから走って逃げたが、左右の脚にそれぞれ二発ずつ銃弾を浴びた。「混乱の中、妻を見失い、自分は廊下の壁にもたれ、首を下げて死んだように装った。『この悪夢はいつか終わる』と念じながら一時間近くが過ぎた頃、警官が到着、ようやく生還できると確信した(2015年3月24日『共同通信』)」と証言している。

とてつもない至近距離でテロリストに遭遇してしまい、銃弾まで浴びたにもかかわらず、足の痛みを必死にこらえて「死んだふり」をすることで、まさに九死に一生を得た。

自らの直感で動け!

当初、テロリストたちは、博物館の隣の国会議事堂を狙ったのだと伝えられていたが、後に明らかになった情報から、最初から計画的に博物館の外国人観光客を狙っていたという。

テロリストたちは、博物館の従業員は殺さずに逃がしており、外国人観光客だけを攻撃している。ちょうど観光バスが到着して、外国人観光客がバスから降り始めたところを狙って銃撃を開始したことが明らかになっている。テロリストたちは駆けつけた警官と銃撃戦になり、手榴弾まで投げた後に博物館に入った。

これだけ激しく外でドンパチをやっていたのだから、博物館の中にいた人にも、銃声は十分聞こえていたはずだ。判断さえ間違っていなければ、逃げ隠れする時間はあっただろう。

実際に上記のベルギー人は、「銃声が聞こえたが、ガイドが『よくあることだ』と言ったため、そのままツアーを続けて」被害に遭ったと証言している。他人の言うことを信じてはいけない。自らの直感で動かなければならない。