日本でも必ず起こる
テロに遭遇! その瞬間、どう行動するのが「正解」か

何が生死を分けるのか
菅原 出

チュニジアのテロは想定されていた

最後に、こうした対策にもかかわらず、運悪くテロに遭遇してしまった場合の対処について、2015年3月にチュニスの博物館で発生したテロの事例を使いながら考えてみたい。

はじめに、「なぜチュニジアでテロが?」と一般の人は不思議に思うかもしれないが、テロ専門家の間では、チュニジアでのテロは想定されていた。

ISに加わる外国人戦闘員の出身国を見ると、近隣のヨルダンやサウジアラビアを抜いてダントツがチュニジアであり、その数は3000名と言われている。イスラム過激派の巣窟と呼ばれるチュニジアには、シリアに行かないまでも「ISに入りたい」「ISは正しい」と思う若者も多くいるので、当然「テロ要注意」国と考えられてきた。

2015年に入ってから、すでに同国では「一匹狼型」のテロが発生しており、テロ・リスクが高まっていたことは、公開情報を追うだけでも理解できたはずである。実際、『共同通信』は以下のような情報を伝えていた。

●1月4日、首都チュニスから40キロくらい離れた郊外で、帰宅途中の警官がイスラム過激派の集団に襲われて喉を切りつけられ、ナイフで胸を刺される事件が発生。

●2月7日、首都チュニスなどで大規模な襲撃を計画したとして、シリアから帰国した戦闘員を含む過激派32名を逮捕。チュニジア内務省のスポークスマンは、過激派が内務省や民間のビルなどを標的にした襲撃計画を立てていたと発表。

●2月17日、チュニジア中部のカスリーヌで警官4名が過激派に殺害される事件が発生。

●翌18日には、アルジェリアとの国境付近にある検問所が襲撃を受けた。こうしたテロ事件を受けてチュニジア軍は、イスラム過激派の取り締まりを強化し、アルジェリアとの国境に近いシャンビ山で掃討作戦を開始。

●2月24日にチュニジア陸軍は、「ISに忠誠を誓うリビア国内のグループが、チュニジア国境からわずか45キロ離れた地点で訓練キャンプを運営し、常時3000~4000人の戦闘員が訓練を受けている」と発表。同陸軍報道官によれば、戦闘員の大半はチュニジア人とのことだった。

こうした公開情報を見るだけで、「テロリスト予備軍」がチュニジアに多く存在し、すでにチュニジア治安機関と過激派の「対テロ戦争」が激しく展開されていたことが理解できる。

「至近距離にいる人」が危ない

この博物館テロに巻き込まれた結城法子さんは、マスコミに発表した手記で、以下のように記している。

二階を見学している時に、ツアーの参加者が「窓の外に銃を持った人がいる」と言い、何人もがのぞいていました。ガイドは、「チュニジアではよくあることだ」と言ったように思います。あまり緊迫感はなく、まさか発砲されるとは思いませんでした。その後、ガイドに部屋を移動するように言われ、移動している途中で銃声が聞こえました(2015年3月22日『共同通信』)〉

チュニジアがイスラム過激派の巣窟で現在治安機関と過激派が激しい対テロ戦争を行っている事実をもし知っていれば、「銃を持った人がいる」と聞いただけで「やばい」とピンと来たのではないか。もっともそれ以前にチュニジアを訪れていなかっただろう。

「銃を持った人」と言っても、ストラップで肩から銃を掛けているだけなのか、いつでも引き金を引ける状態で持っているのかで、状況は大きく異なる。もし銃を持った人の姿を確認できたなら、その点を見極めて「やばい」ことが分かったかもしれない。

公開された監視カメラに映っている犯人は、すぐに発砲できる体勢でライフルを持って早歩きで移動していた。訓練された動きである。このような体勢で銃を持っている人がその辺を歩くことが、「よくあること」なはずはない。このガイドは見もしないで実に無責任なことを言ったものである。