『ハウス・オブ・カード』の衝撃〜ネットフリックスのオリジナルコンテンツ戦略がすごい

西田 宗千佳 プロフィール

より長期的な視点で収益を見る

ネットフリックスのオリジナルコンテンツ戦略は、はっきりと成功を収めつつある。

そもそも、すでにある映画やドラマの提供を受けるだけであれば、ライバルとの差別化は難しい。レンタルビデオ店によって多少の差はあれど、多くの人が見たいと思う作品は、たいていどの店にもあるものだ。店に並ばなければビジネスにならないので、独占にするのはリスクに他ならないからだ。

他の店にないものを用意したいなら、身銭を切って用意するしかない。オリジナルコンテンツ展開の本質はそこにある。

ネットフリックス日本法人・ピーターズ社長は、オリジナルコンテンツ調達の方針について、つぎのように説明する。

我々は映画、連続ドラマ、ドキュメンタリーにフォーカスしている。我々はコンテンツ調達をおこなううえで、長い期間楽しんでいただけるもの、という点を重視する。今年私がこの映画を見なかったとしても、来年には見る可能性がある。それにくらべると、スポーツは『その時』楽しむ傾向が強い。ドラマにくらべると、5年前のサッカーの試合を見る人は、そんなに多くはない

新規コンテンツが最大の価値を持つのは、もちろん、はじめて公開される時である。だが、作品はライブラリーとして積み重なっていくので、サービス全体としてはより投資効率がいい。

日本でコンテンツ調達を担当する大崎貴之執行役員副社長も「我々のコンテンツには、映画と違い『劇場公開の収益』のような厳しい目標の縛りはない。より長期的な視点で収益を見る。ライフサイクルで投資価値を判断している」と話す。こうした部分が、視聴率や興行収入といった縛りの強いメディアとの違いと言える。

ネットフリックスの成功を見て、他のネット配信事業者も、こぞってオリジナル作品への投資を積極展開しはじめた。特に米アマゾン・ドット・コムは、有料制会員サービス「アマゾンプライム」加入者向けのSVODのために、自社でドラマ制作スタジオを構え、オリジナル作品の制作に余念がない。

こうした傾向は、映像を作る立場である、映画会社の体制も変えつつある。「ハウス・オブ・カード 野望の階段」の制作を担当したSPEは、高品質なドラマ制作の収益性の高さ、そして、制作・出資パートナーとしてのネット企業の可能性を評価し、「今後の事業成長は、ドラマ部門にかかっている」(SPEマイケル・リントンCEO)という方針を立てるほどだ。

視聴者の目線が「SVODから生まれる新しいコンテンツ」に注がれるようになった結果、お金もビジネスもそこに集まっている、ということなのだろう。