朝日新聞「驚きの敗訴」で見えたカジノビジネスの「光と闇」

北島 純 プロフィール

朝日対UE社の背後にあるもの

そんななか、岡田氏はマカオでのカジノビジネスに関する「不審な支出」に直面する。岡田氏が公表したウィン社取締役辞任時の表明書やUE社の訴訟資料等によると、マカオ大学開発基金へ1億3500万米ドルもの巨額寄付を行うことを、ウィン社取締役会でウィン氏が提案した、という。

なぜ大学開発のための巨額な寄付が必要なのか――。

疑問に思い、帳簿等の閲覧を請求した岡田氏。ところが、それが拒否されたうえに、岡田氏はウィン社の副会長を解任されてしまう。ウィン社がFBI元長官のフリー氏にデューデリジェンス(事案の精査)を依頼したのは、まさにその時期であった。

そして、岡田氏が念願のマニラベイリゾーツプロジェクトの着工式に臨んだ半月後、前述のフリーリポートが公表された。「UE社がフィリピンの娯楽賭博公社幹部を接待していたと一応みられる」という発表は世界中に衝撃を与え、同時に、岡田氏はウィン社を去ることになったのである。

つまり、今回の朝日新聞対UE社の訴訟の背景には、フィリピン政府カジノ規制当局の関係者、つまり「外国公務員に対する贈賄」があったのかなかったのかという疑念だけではなく、カジノを巡る日米の企業間紛争も複雑に絡み合っているのだ。

 上記で見てきたように、その紛争の出発点は、そもそもマカオにおけるカジノビジネスに絡んで支出されようとした「巨額寄付金」であったと言える。だが、この巨額の「寄付」がいかなる性質のものであったかという点は、今なお明らかにされておらず、その意味で「闇」に眠っているのだ。

では、日本企業によるカジノビジネスの先駆的な試みに「闇」が付きまとったのは、なぜだろうか。