訪日外国人が思わずうなる「ニッポンの食」〜駅弁・調理パン・ラーメン……その意外な高評価のワケ

鴻上 尚史 プロフィール

家からパスタを作ってきた、と自慢げに語るクラスメイトは、タッパーになんの具もないパスタをぎっしり詰め込んでいました。それが、お弁当のすべてでした。

「野菜はないの?」と訊くと、たいてい、キョトンとした反応をしました。「どうしてそんなことを訊くのか?」という顔でした。ひとつの食材、トマト味のパスタだけを食べることで、なんの問題があるんだ? と心底不思議そうな顔でした。

サンドイッチを作ってきた、とさらに自慢げに語るクラスメイトが見せたのは、パンにただチーズを挟んだだけのものでした。よくてハムです。欧米では、果物を野菜代わりに取りますから、健康を意識しているクラスメイトは、これにリンゴを足します。つまりは、「ハムサンドとリンゴのお弁当」。それが、一番、意識的に進んでいる「健康的」なメニューでした。

日本人は、「弁当」というスタイルを持つので、昼食の「ご飯とおかず」をいろいろと考えるんだろうかと、この時、ふと思いました。

弁当は弁当箱に入れます。つまり、弁当のフタを開けると、一目で、自分がどんなものを食べるのか分かるのです。

弁当箱という区切られた空間ですから、ご飯とおかずのバランスもはっきりと際立ちます。そして、おかずの量と種類がリアルに分かるのです。

西洋では、「弁当箱」というシステムを持ちません。自分の食べるものがバランスを含めて、一目で分かる、ということはないのです。

また、サンドイッチを作っても、日本人のように「弁当箱」に入れません。サンドイッチはサンドイッチとしてラップなどにくるみます。他の食べ物とは別です。一目で、「自分がなにを食べているか」を理解する風景はないのです。

また、サンドイッチは、パンにはさんだ中身の食材がいまひとつ分かりません。この辺りが、自分がお昼に食べるものに、無自覚になる原因なんじゃないか、と少し強引に思ったのです。

まあ、僕が具体的にお昼のお弁当を見たのは、イギリスとアメリカだけですから、フランスやイタリアは、西洋でも豊かなお弁当を食べているのかもしれません。

とにかく、駅弁は外国人に評判がいいです。カラフルな外装、フタを開けた途端、ご飯とおかずが見やすくひとつの空間に並べられている点、ご飯とおかずの視覚的な美しさ、その土地の食材を使っている点、などです。

そして、日本人にはもうお馴染みですが、付いているヒモを引っ張ると化学反応でお弁当全体が温められる「ハイテク駅弁」に、外国人は驚いていました。スキヤキ弁当や牛肉弁当などを「加熱式容器」で温めて食べるのです。食文化とハイテク・ジャパンの見事な合体です。