なぜ「少年A」の実名報道をためらうのか
~少年法。その”聖域”に踏み込む

藤井 誠二

もっと実名報道の議論を!

『「少年A」被害者遺族の慟哭』では、十数年前に起きた事件から数年前に起きた事件まで扱っているが、加害者の名前をどうするかは遺族ととことん話し合った。実名報道を望む被害者もいれば、そうではない遺族もいる。被害者側がすべて実名報道を望んでいるというわけではないのだ。

結果、実名は控えるが、地域名などは特定したし、加害者のプライバシーについてはそうとう詳細に書き込んだ。実名報道については、できうる限り被害者側の意見も取り入れるべきだろう。

18歳選挙権で、来年(2016年)夏の参議院選挙から18歳にも選挙権が認められるようになる。それに付随して、少年法の対象年齢が20歳から18歳に下げられる可能性も検討するとの意見が、与党の中からも上がっている。

そうした社会の変化も含め、犯罪報道の視点から、各メディアは実名報道について独自の判断でのぞんでもいいのではないか。もし少年法61条違反で「実名報道された側」から訴えられることがあれば、過去の判例を土台にしながら論争をし、実名報道に踏み切った判断理由を社会に向けて発信すればいいと思う。

もちろん、実名報道をしない方針であれば、それも61条に書かれているからという理由だけでなく、報道機関としてその姿勢を明確にすることも一方で大事だと思う。61条に実名報道が禁じられているからしない、というロジックに横並びに依拠しているだけでは、それは思考停止ではないか。