ニッポンの家電産業はなぜ負け続けるのか? 手遅れになる前に「現場」への大胆な権限移譲を!

辻野 晃一郎 プロフィール

大きく俯瞰し、チャレンジ精神や遊び心を取り戻せ

日本発の家電ベンチャーにも、バルミューダのように元気な会社がある。二枚羽の扇風機や、こだわりのトースターなどを商品化してヒットさせており、チャレンジ精神に根差したやんちゃで元気なエネルギーを感じる。

もちろん、大手も前述のようなさまざまな問題を抱えながらも、変わろうともがき苦しんでいる。たとえば、ソニーでは、「First Flight」というクラウドファンディングとECを統合したようなサイトを立ち上げ、消費者も巻き込んだオープンな商品開発スタイルの構築に挑戦している。

その仕組みを使い、自分専用にカスタマイズできるリモコン「HUIS REMOTE CONTROLLER」の商品化を進めたり、遊び心満載の電子ブロック「MESH」や、ボタン操作で文字盤とベルトの柄を変えることが出来る「FES Watch」などを販売している。

古い閉鎖的な商品化プロセスでは、画期的なアイデアが社内の無理解な人たちによって潰されるリスクが常に付きまとうが、早い段階からユーザーの反応や要望を確認でき、支援者を募ることができるオープンな新商品開発スタイルは、まさに時代に即したものといえよう。

また、パナソニックでは、2012年1月に子会社であったパナソニック電工を本体に吸収合併した。このことは、今後のスマートホーム市場の拡大に備えて無用な縦割りを解消した事例として評価できる。

日本の家電産業を復活させることは容易ではないだろう。既存企業の存続を前提とするよりも、業界全体を広く見渡した上での本格的な再編のアプローチは不可避といえる。

そのときには、個々の企業が抱えてきた古い体質を転換させて、「リアルタイム経営」を実現する新たな経営スタイルの確立を目指す必要がある。

そして、「家電」を文字通り、「家の電気製品」と解釈するならば、今後は「家のスマート化」や「家のインテリジェント化」という流れの中で家電を大きく捉え直し、新たな製品や事業を創出していく戦略や取り組みが求められる。

さらにいえば、もはや「家電」「クロモノ」「シロモノ」といったくくりの意味もなくなっている。HAやバルミューダのように、従来の枠や常識を超えた新家電やこだわり家電を生み出すチャレンジ精神や遊び心を取り戻さねばならない。

現状のすべてを俯瞰し、未来を見据えた視点で、今のピンチがチャンスに転換することに期待したい。

辻野晃一郎(つじの・こういちろう)
1957年福岡県生まれ。アレックス(株)代表取締役社長兼CEO、元グーグル日本法人代表取締役社長。慶應義塾大学大学院工学研究科修了、カリフォルニア工科大学大学院電気工学科修了。ソニーでVAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオなどの事業責任者やカンパニープレジデントを歴任したのち、2006年3月に退社。翌年グーグルに入社し、その後、日本法人社長に就任。10年4月に退社後、アレックスを創業。