ニッポンの家電産業はなぜ負け続けるのか? 手遅れになる前に「現場」への大胆な権限移譲を!

辻野 晃一郎 プロフィール

次に、日本企業の内的要因としては、前述のような外部環境の変化に対して、企業体質や経営スタイルがいまだに「ビフォー・インターネット」のまま、というところが多く、変化に先行することも、すばやく追随して新たな勝ちパターンを生み出すこともできていない。

一般的に、日本企業は稟議などの仕組みで意思決定に時間がかかりすぎるところが多い。「即断・即決・即実行」の「リアルタイム経営」の実現を急ぐ必要がある。

そのためには、社内環境をクラウドに移行して情報の共有性を高めるだけでなく、組織の縦割りや階層を排してフラット化を進め、権限をできるだけ現場に移譲して承認プロセスを簡略化するなどの企業改革が必要だ。

また、IoTの本格化に伴い、従来のカテゴリに基づいた縦割りの意味はなくなる。車や家やコミュニティなど、さらに大きな生活インフラや、新たな消費行動との緊密な関連性の中で、家電各商品や事業を位置付け直していかねばならなくなる。

ビッグデータをすばやく収集・分析・活用する観点からも、従来型の組織の縦割りや階層は障害だ。できるだけオープンでフラットな組織やマネジメントの仕組み作りが急務だが、企業改革は遅々として進んでいない。

元気な新興勢力に古参エンジニアの存在

一方、対照的に、ハイアールアジア(HA)のような新興勢力は元気だ。HAは次々と奇抜なシロモノ家電の商品化を発表している。しかし、その裏には、今は亡き旧三洋電機の技術者たちの活躍がある。

廃業の辛酸を散々に舐めた旧三洋の古参エンジニアたちが、屈辱の経験をバネに、「まずは作ってみよう」を合言葉として、立ちはだかる様々な難題を乗り越え、従来の技術常識や商品常識を打ち破る新商品を次々と製品化しているのだ。オーナーや経営者が変われば現場が息を吹き返す事例ともいえる。

たとえば、手のひらサイズの洗濯機「コトン」。携帯もできる「シミ抜き」だが、中国では丸洗いせずにシミや汚れだけを落として何日か同じ服を着続ける習慣があることがヒントになった。

ハンディ洗濯機COTON(YouTube「AQUA(アクア) Channel」より

三洋時代から洗濯機を手掛けてきた日本チームが機能やデザインにこだわってスピード開発した。単なる「シミ抜きデバイス」ではなく、「世界最小の洗濯機」と銘打ったマーケティングセンスも優れており、昨年、発売と同時にヒット商品となった。

その他、映画スター・ウォーズに登場するロボット「R2D2」型の冷蔵庫を発売したり、洗浄の様子が見えるスケルトンの洗濯機や液晶ディスプレイ付き冷蔵庫「DIGI」などを発表したりしている。

予定より発売は遅れているようだが、DIGIには、上下の扉にアンドロイド搭載の液晶ディスプレイが設置されており、インターネットで食材を購入したり、家族間でメッセージを交換したりと、さまざまなサービスが利用できる。

この冷蔵庫も、旧三洋で家庭用冷蔵庫を手掛けてきた日本チームが開発している。商品コンセプトは、「ディスプレイ付き冷蔵庫」ではなく、「冷蔵庫付きディスプレイ」だそうだ。「冷蔵庫は冷やすだけ、という役割を終える」というHAアジア伊藤嘉明社長のコメントが新鮮に響く。