ニッポンの家電産業はなぜ負け続けるのか? 手遅れになる前に「現場」への大胆な権限移譲を!

辻野 晃一郎 プロフィール
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日本の家電産業の苦境が一気に表面化したのは、東日本大震災に見舞われた翌年、2012年3月期の決算発表時であった。ソニー、パナソニック、シャープなどの家電大手各社が、軒並み一社当たり数千億円に及ぶ巨額の損失を計上して、世間に大きな衝撃を与えた。

その後、各社各様の建て直し努力が続いているが、これは、決して震災などに起因した一過性の現象ではない。それぞれの企業固有の経営問題であると同時に、日本の家電産業全体が抱える構造的な問題が一気に露呈したものでもある。

したがって、国家の産業政策的にみれば、業界大再編を視野に入れたダイナミックな産業革新の発想とアクションが求められてしかるべきなのだ。

そんな中、先般、東芝・富士通・VAIOのパソコン事業統合や、東芝とシャープのシロモノ家電事業統合のニュースが流れた。企業ぐるみの悪質な不祥事が発覚して、深刻な経営不振に直面する東芝のリストラが起点になって業界再編が進むのは皮肉な話だ。

しかし、きっかけはともかく、今後、日本の家電産業がグローバル市場での競争力を再び取り戻すためには、手遅れになる前に本格的な業界再編を急ぐべきだろう。一時「産業のコメ」とも呼ばれ、1980年代には隆盛を誇った日本の半導体産業が、今ではすっかり衰退してしまったことを思えば、残された時間は長くはない。

半導体業界でも、結局、NEC・日立製作所・三菱電機の半導体部門を再編し、産業革新機構やトヨタなどが資金援助をしてルネサス エレクトロニクスを誕生させたが、後手に回った感は否めない。

ネット時代に対応が遅れた

日本の家電産業はなぜ苦境に追い込まれたのか。

外的な要因をいくつか整理すると、一つ目は、インターネットやクラウドコンピューティングの発達によって、家電の定義が変わってしまったことだ。特に、テレビやオーディオといった「クロモノ」の世界は、デジタル家電に完全に置き換わり、中でもスマホは手軽な万能デバイスと化した。

それに伴い、ビジネスの付加価値はソフトやプラットフォームに移行した。この先、あらゆるモノがインターネットと繋がるIoT(Internet of Things)の時代を迎え、冷蔵庫や洗濯機といった「シロモノ」も含めた家電に留まらず、自動運転する車、省エネする家など、人工知能の応用なども拡がって、すべてがインテリジェント化していく。

二つ目は作り方が変わったこと。日本の製造業は自前主義の垂直統合型のスタイルで世界最高性能・最高品質の工業製品を生み出してきたが、家電製品は今や水平分業型が主流となった。アップルやグーグルが開発したソフトや製品仕様に基づいて、アジアのEMSが量産するという役割分担の構図が定着した。

三つ目は、「ムーアの法則」やデジタル化による過当競争で製品のコモディティ化が進み、ライフサイクルが極端に短くなったこと。デジタル家電は耐久財ではなく、消耗財の位置付けとなり、品質の高さよりも新製品投入の頻度が決め手となった。携帯市場でも格安携帯が普及し、中国の小米(シャオミ)などの新興ブランドが一気に台頭する時代だ。

四つ目は、スマホやSNSの浸透で消費行動が様変わりしたこと。従来のマーケティング手法や広告宣伝手法が通用しにくくなり、口コミや知り合いの推薦などが消費行動に大きな影響を与えるようになった。

また、企業は、自社商品や自社に対するネガティブな情報の処理を甘くみると、仮に自分たちに重篤な落ち度がなくても、たちどころに悪い噂が広まってブラック企業のレッテルを貼られるなど、消費者と企業の力関係も様変わりした。