先進国を狙う新型テロ「サイバー・パールハーバー」の脅威!

山田 敏弘 プロフィール

この言葉が一般にも知られるようになったのは2012年のことだ。当時の米国防長官、リオン・パネッタが、「サイバー・パールハーバーは現実の被害や人命の喪失の原因になり、国家を麻痺させ、これまで感じたことのないような重大な脆弱さを生む攻撃」であると言及し、物議を醸したからだ。

パネッタは続けて、「攻撃側の国(=攻撃を仕掛けてくる恐れのある国)、または過激派がサイバー攻撃で重要なインフラの切り替え装置などを支配」し、例えば、「最悪のケースでは致死性の化学薬品を積んだ列車を脱線させる可能性もあるし、都市部の水道を汚染したり、国内の大部分で電力を停止させることもできるである」と警告した。

パネッタの言う「攻撃側の国」とは、言うまでもなく、アメリカと敵対する中国やロシア、イランや北朝鮮である。こうした国々は虎視眈眈とアメリカのインフラやネットワークへの侵入を狙い、実際に深く入り込んでいる。

たとえば中国が、アメリカや日本など欧米諸国に際限ないサイバー攻撃を繰り返してきたことは改めて指摘するまでもないだろう。ある米IT企業の研究によれば、中国は少なくとも世界各地の2万4000のドメインを拠点としてアメリカへのサイバー攻撃を行っているという。

また、300種類以上のマルウェア(有害な動作をさせる悪意あるソフトウェア)を駆使して、アメリカに対してハッキングを行っている。これらの数字は、アメリカに限ってわかっているだけであって、現実の数はさらに多いとみられている。

さらに中国は、人民解放軍の「61398部隊」と呼ばれるサイバー部隊などを使い、世界中の企業やインフラなどに侵入している。目的は、知的財産を盗んだり、有事に向けたスパイ工作だったりする。

FBI(米連邦捜査局)は2014年5月に、原発や鉄鋼関連企業をハッキングした疑いで61398部隊の将校5人を起訴しているし、中国の関与が疑われる電力遮断事件も起きている。またカナダの電力会社も中国のハッカーに侵入されていたことを明らかにしている。

他の国も中国に負けてはいない。ロシアは2008年に中東で米軍のシステムに侵入したことがあるうえ、トルコの石油パイプラインをサイバー攻撃で爆破した過去もある。最近サイバー能力を高めているイランも、インフラなどへの攻撃能力を付けてきており、2012年にはライバル関係にあるサウジアラビアの国営石油企業サウジ・アラムコに大規模なサイバー攻撃を行っている。

北朝鮮も2013年に韓国のテレビ局と銀行などを大規模攻撃している。また2014年に金正恩第一書記を暗殺する映画『インタビュー』をめぐって米ソニー・ピクチャーズに大規模なサイバー攻撃を行ったケースは記憶に新しい。3500万ドル以上の損出となったソニーへの攻撃は、アメリカが誇るエンターテイメント・インフラへの攻撃でもあった。

そのようななかで、国家に限らず、非国家主体であるイスラム国のような組織がサイバー・パールハーバーを引き起こす可能性が懸念されているのだ。イギリスは最近、イスラム国とアノニマスのサイバー攻撃合戦の舞台となっており、集中放火を浴びて話題になっている。さらに、イスラム国がアメリカのインフラに侵入しようとした形跡も報告されている。