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先進国を狙う新型テロ「サイバー・パールハーバー」の脅威!

米英がサイバー攻撃を恐れる理由

「彼らは全力を挙げて、サイバー攻撃で人を殺そうとしている」──。

11月17日、イギリスの情報機関であるGCHQ(英政府通信本部)で行われた講演で、ジョージ・オズボーン英財務相はそう警告した。「彼ら」とは、イスラム国(IS)のことだ。

オズボーンはISの脅威を説明したうえで、「他の予算(福祉など)を削っているこの時代であっても、サイバー防衛の予算を増やすという選択は正しい」と続けた。

そしてイギリスが今後5年でサイバー関連予算をこれまでの倍となる28億ドルに増額すると発表、さらにサイバー専門部隊を擁することになるイギリス初の「ナショナル・サイバーセンター」を設置することも明らかにした。

サイバーセキュリティ関連予算を増額しているのはもちろんイギリスだけではない。アメリカのサイバー予算も2016年度55億ドルで、前年度よりも6億ドル増加している。この傾向は世界的なものとなっている。

アメリカやイギリスがサイバーセキュリティに多額の投資を続けている最大の理由は、情報漏洩などのサイバー犯罪行為を防ぐことではない。彼らがそれ以上に懸念していること。それは、「サイバー・パールハーバー(サイバー真珠湾攻撃)」が起きる危険性だ。

真珠湾攻撃がサイバー空間で起きる、といってもピンとこないかもしれないが、実際にアメリカをはじめとするサイバーセキュリティ先進国では、専門家らの間で過去20年以上にわたって「サイバー・パールハーバー」の問題が議論されている。

サイバー・パールハーバーとはどんな脅威なのか。そして世界の強国は、サイバー領域で何が起きるのを恐れているのか。

破滅的結果をもたらしかねない

サイバー攻撃というと、多くの人は個人情報漏えい(最近の日本なら年金機構やマイナンバーで話題になった)や、銀行口座情報を盗まれるといった犯罪行為をイメージするのではないだろうか。だが世界各国が主眼を置くサイバー攻撃というのは、もはやその次元を超えている。

サイバー・パールハーバーとは、国家の安全保障を揺るがすような大規模な攻撃のことをいう。米軍やホワイトハウスなどがサイバー攻撃で機能不全に陥れば、米政府の中枢は崩れかねない。さらに電力や水道、鉄道といった基幹インフラに対する大規模な攻撃が起きれば、政府だけでなく国民の生命・財産を危機に晒すことになる。

1995年の阪神・淡路大震災や2011年の東日本大震災など、インフラの機能不全がもたらす混乱はご記憶のことだろう。主要都市部で電力が止まったり、鉄道網が破壊されたり、はたまた原子力発電所が機能不全に陥れば破滅的結果をもたらしかねない。こうした標的への大規模な攻撃が「サイバー・パールハーバー」と呼ばれているのである。