絶対王者・羽生結弦は「メディア対応」も世界一〜イチロー、本田圭佑、北島康介とはココが違う!

森田 浩之 プロフィール
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メディアをうまく「使う」本田圭佑

ロンドン五輪の翌年の2013年にイタリア・セリエAの名門ACミランに移籍した本田圭佑の場合、名言のヒット作はそれほど思い浮かばないが、どちらかといえばメディアをうまく「使う」方法を知っているタイプのアスリートだ。「日本代表に最も欠けているのは『個の力』」などという自らのメッセージを、メディアに伝えることで上手に発信する。

この秋にもACミランで2試合続けて出番がなく、チームが2連敗した試合のあとに、日本の取材陣を前にクラブの状況を7分間にわたって批判した。出番がなかったこととチームの大敗で頭に血がのぼった様子では決してなく、実に冷静な口ぶりだったという。

「この敗戦から学ばないと、いつまでたっても再建というのは程遠い」
「選手が気づいていても、このチームは変わらない。やはりトップの人間、経営陣が気づく。そして監督が気づく。選手たちが気づく。と同時にファンたちも気づいていかないと」
「イタリアのメディアに伝えておいてください、僕の話したことを。また、さんざんっぱら僕のことをたたくんでしょうけど」

真正面からのクラブ批判に、イタリアと日本のメディアは「懲罰を科される」「放出は決定的」と騒ぎ立てた。しかし今年最後の試合となるアウェイでのフロジノーネ戦で本田は今季のリーグ戦では初めてフル出場し、同点ゴールをアシスト。ACミランは4−2と逆転勝ちした。

それまで本田を「寿司配達員」「自由に退団できる人」などと酷評していたイタリアのメディアは、手のひらを返したように「勇敢なサムライ」「日本のディーゼル車」などと呼びはじめた。

メディアとアスリートの急接近

アスリートの言葉の変遷をたどってみると、アスリートとメディアの仲がしだいに縮まってきたように思える。アスリートはメディアの前で振る舞うことに慣れていき、ときには利用することも覚えてきた。

メディアの側もアスリートが平均的にメディア慣れしてきたことに気づき、ずば抜けてメディアジェニックなアスリートがいることも感じ取るようになった。こうして、テレビカメラの前でのアスリートの振る舞いや新聞に載る彼らの言葉は、どんどんクオリティを上げてきた。

そんなメディアジェニックなアスリートの系譜の頂点にいま君臨するのが、まちがいなく羽生結弦だ。インタビューに「神」のような受け答えをしてファンを魅了するだけではない。ときには記者会見そのものまで、羽生が「進行」してしまう。

バルセロナでのグランプリファイナルを世界最高得点で制し、帰国したあとの記者会見。その場を羽生本人が取り仕切る場面を、NHK『ニュース7』が流した。

「スチル(写真)の(カメラマンの)方、先に撮ってください」
「IC(レコーダー)を置く方は僕がお預かりします」

NHKも羽生の仕切りを「神対応」と認めざるをえなかったようだ。