# 貧困・格差

「ふとんで年を越したい…」
急増する「見えない貧困」、恐怖の年末年始がやってきた

大西 連 プロフィール

「見えない貧困」は拡大している

「本当にここに泊まっていいんですか?」

シェルターのドアを開けるなり、岸田さんはためらいの表情で振り返った。年末年始の緊急シェルターはビジネスホテルを借り上げたもので、個室で、暖房があり、清潔なベッドにテレビも備え付けられている。

ホテル借り上げは費用がかかるのがネックではあるが、「ふとんで年越しプロジェクト」では、できるだけ良い環境の宿泊場所を用意することにこだわっている。

「なんだか、ふとんで寝るのは本当に久しぶりな気がして……」

その時の岸田さんの何とも言えない表情を、僕は忘れることができない。彼は結局、年明けまでの5日間、シェルターに宿泊した。1年経った今も派遣社員として働いていることはかわらない。しかし、ネットカフェからではなくアパートから出勤している。

岸田さんのように民間の支援につながる人は残念ながら稀だ。彼もネットカフェで財布を盗まれなかったとしたら、もしかしたら、相談に来ることはなかったかもしれない。

「ホームレス状態」の人たちは、一見、「ホームレス」には見えないし、生活困窮していることが傍目にはわからない。また、本人たちも自覚していないかもしれない。そういった「見えない貧困」は統計にも反映されなければ、支援団体がアクセスすることもままならない。

日本のホームレス支援、生活困窮者支援は、もしかしたら、新しいフェーズを迎えている。たくさんの岸田さんが社会のなかに、街のなかに存在し、そして、「見えない貧困」は拡大している。

今夜、ベッドに入る際に、寒空のなかで年を越す1万人のことを想像してほしい。ネットカフェやファミレス、サウナなどで正月をむかえる人たちのことを考えてほしい。そして、私たちの活動にぜひ注目してもらえたら幸いである。

大西連(おおにし・れん)
1987年東京生まれ。認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長。新宿ごはんプラス共同代表。生活困窮者への相談支援活動に携わりながら、日本国内の貧困問題、生活保護や社会保障制度について、現場からの声を発信、政策提言している。近著に『すぐそばにある「貧困」』(ポプラ社)。Twitter:@ohnishiren